薬剤師が教える!口角炎、口唇ヘルペス(再発)に効くおすすめの市販薬
唇は皮膚の粘膜が薄く、トラブルが起きやすい部位です。特に乾燥しやすい時期に、唇の両端が切れたり、唇全体に炎症が起こったりすることもあるでしょう。口角炎や口唇炎は市販薬でのケアが可能です。また唇のピリピリとした症状などは、口唇ヘルペスも考えられます。今回は口角炎や口唇炎と口唇ヘルペス(再発)について解説します。
目次
口角炎、口唇炎の症状と原因
唇の中でも、口角(両端)の部分だけに症状があるものを口角炎(こうかくえん)といい、唇全体に症状があるものを口唇炎(こうしんえん)と呼びます。
口角炎とは
唇の口角(両端)の部分に亀裂が入ったり、炎症が起きて痛みやはれが発生したりします。主な原因は、空気の乾燥や化粧品による刺激などがあります。
口唇炎とは
唇全体に炎症や亀裂が起きます。唇が全体的に乾燥することで皮がむけたり、はれたり、かゆみをともなう場合もあります。主な原因は口角炎と同様に、空気の乾燥や化粧品による刺激などです。
口角炎や口唇炎の対処法
口角炎や口唇炎は、市販薬を使用して様子をみることができます。市販薬を数日使用しても症状の改善が見られない場合は、皮膚科を受診するようにしましょう。
剤形から選ぶ
剤形は「塗るタイプ」と「飲むタイプ」の主に2種類から選択できます。唇の乾燥や荒れなどには「塗るタイプ」で保護することも大切でしょう。
塗るタイプ
リップクリームのように直接塗れるものや軟膏のように一度手に取って塗るものがあります。唇の乾燥が気になる場合は保湿効果のある塗るタイプを使うとよいでしょう。
塗るタイプを使う際は唇の中央から外に向かって、くるくるとマッサージするように塗るとよいでしょう。横向きに塗る方が多いですが、唇の縦しわに沿って塗ると効果的です。
飲むタイプ
ビタミン剤のような錠剤などのものがあります。不規則な食生活などから十分な栄養を補えていない方には飲むタイプがよいでしょう。また飲むタイプは口角炎や口唇炎だけでなく、口内炎などの肌荒れにも効果的です。
食生活の見直しが重要ですが、唇の症状が気になり、食事がとりにくい場合もあるため、ビタミン剤などの市販薬を試してみてもよいでしょう。またサプリメントで不足する栄養を補給するのも1つの手段です。
おすすめの成分
口角炎や口唇炎に対する市販薬には、抗炎症成分や修復成分、保湿成分、ビタミンなどを配合するものなどがあります。
抗炎症成分
口角炎や口唇炎は唇が刺激により炎症を起こしている状態です。その為、炎症を抑える作用のある抗炎症成分を配合した商品を選択するとよいでしょう。症状がひどい場合はプレドニゾロンなどのステロイドの抗炎症成分を、その他の場合はグリチルリチン酸などの非ステロイド成分のものを選ぶとよいでしょう。
修復成分
患部の組織を修復する作用があります。一般的に配合されている成分であるアラントインは抗炎症作用もあり、口角炎や口唇炎の症状がある場合に効果的です。
保湿成分
口角炎や口唇炎の主な原因は乾燥です。その為、乾燥を防ぐことのできる保湿成分が配合された商品も選択肢となります。予防を目的とする場合は保湿成分のみが配合された商品でも良いでしょう。
ただし、症状の改善を目的とする場合は、抗炎症成分や修復成分が配合された商品を選ぶことをおすすめします。
ビタミン
口角炎や口唇炎の原因として、ビタミン不足によるものがあります。特にビタミンB2やビタミンB6の不足は影響があると言われています。手軽に補給できるビタミン剤などの飲むタイプを選択肢とする方が多いですが、ビタミンB群を配合する塗るタイプも選択肢となります。
種類 | 成分 | 剤形 |
---|---|---|
ステロイド性抗炎症成分 | プレドニゾロン | 塗るタイプ |
抗炎症成分 | グリチルリチン酸 | 塗るタイプ |
修復成分 | アラントイン | 塗るタイプ |
保湿成分 | ワセリン | 塗るタイプ |
ビタミン | ビタミンB群(主にB2、B6) |
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「医薬品」と「薬用」リップクリームの違い
ドラッグストアなどでは医薬品のリップクリームと「薬用」と記載されている医薬部外品、また化粧品に分類されるリップクリームがあります。それぞれの目的や使い分けを理解し、自身に合った商品選択を行いましょう。
医薬品
医薬品は病気の治療や予防を目的とした商品です。口唇炎や口角炎などの症状がすでにある方は医薬品を選びましょう。
医薬部外品(薬用)
「薬用」と記載されている商品は特定の症状の防止が目的となります。口唇炎や口角炎、唇の荒れ、乾燥などの予防をしたい方は医薬部外品(薬用)を選ぶとよいでしょう。
化粧品
化粧品は皮ふを健やかに保つことが目的となります。ニベアのカラーリップなど、色付きのものなどは化粧品となります。普段使いや唇の保湿などをしたい方は化粧品を選ぶとよいでしょう。
区分 | 目的 | おすすめの方 |
---|---|---|
医薬品 | 医薬品は病気の治療や予防が目的 | 唇炎や口角炎などの症状がすでにある方に |
医薬部外品 (薬用) |
特定の症状の防止が目的 | 口唇炎や口角炎、唇の荒れ、乾燥などの予防をしたい方に |
化粧品 | 皮ふを健やかに保つことが目的 | 普段使いや唇の保湿などをしたい方に |
<口角炎、唇のひびわれに効く市販薬の選び方>
<食事のバランスが気になる方のサプリの選び方>
栄養不足の補給にサプリメントの使用も1つの手段となります。
口角炎、口唇炎におすすめの市販薬
塗るタイプ
ステロイド無配合
「メンソレータム ヒビプロLP」は、一度割れるとなかなか治りにくいひび割れを、こだわりの密着処方でなめらかな唇へと導きます。
有効成分アラントイン・パンテノール・ビタミンE誘導体が患部を修復。また、ワセリン基剤で患部にピッタリ密着し、つらいひび割れをしっかり保護します。
就寝前にお使いいただくのが効果的です。
口角炎・口唇炎は、医薬品でしっかり治療することが大切。
「メンソレータム メディカルリップnc」は、荒れた唇を治療し、しっとりなめらかにする医薬品のリップです。
アラントインが荒れた唇の修復を促進し、ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)が皮フの新陳代謝を促すのでひびわれに効果的。
清涼成分無配合なので、敏感な唇にもやさしい使い心地。
唇にそのまま塗れるチューブタイプで携帯にも便利です。
「メンソレータム メディカルリップb」は、荒れた唇を治療し、しっとりなめらかにする医薬品のリップです。
アラントインが荒れた唇の修復を促進し、ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)が皮フの新陳代謝を促すのでひびわれに効果的。
dl-メントール配合で、スーッと爽やかな使用感です。
ステロイド配合
携帯に便利なチューブタイプです。
デンタルピルクリームは、炎症が起きる原因を根元から抑える合成副腎皮質ホルモン・プレドニゾロンと、患部の細菌感染を防ぐ殺菌成分・セチルピリジニウム塩化物水和物を効果的に配合しており、口唇炎、口角炎などに優れた効果をあらわします。
口内炎などに口内にも使用可能
●口内炎軟膏大正Aは、口内炎・口角炎などの治療を目的として開発した軟膏です。患部への密着性が良く、口腔内であっても長時間患部を覆うので、舌・歯・食物からしっかり保護します。
●ステロイド成分は入っていません。
飲むタイプ
ビタミンB2の補給ができるビタミン剤
1日最大量※のビタミンB2をはじめ、ビタミンB6などの5つのビタミン群が、1日2錠で手軽に摂取できます。
※一般用医薬品製造販売承認基準
食事から摂取した糖質、脂質、たんぱく質の代謝をサポートして効率よくエネルギーに変換し、毎日の疲れをケア
保湿を目的とする場合
ワセリン
口唇ヘルペスとは?
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染により、小水疱(水ぶくれ)やびらんが口唇部にできる疾患です。口唇炎と思い、口唇炎や口角炎の薬を使用しても症状はよくなりません。それぞれの違いを理解し、口唇ヘルペスを疑う場合は、まずは医療機関(皮膚科)を受診するようにしましょう。
口唇ヘルペスの症状
通常、唇にピリピリ、チクチクといった感覚や赤くはれ、その上に水疱ができ、かさぶたになるといった流れで症状が変化します。初めて単純ヘルペスウイルスに感染した時は無症状の場合や逆に中等症~重症化する場合もあります。一方、再発時は症状の変化の範囲が狭いため、水疱は小さいとされています。
状態 | 症状 |
---|---|
口唇ヘルペス | 唇にピリピリ、チクチクといった感覚や赤く腫れ、その上に水疱ができる |
口唇炎 | 唇全体に炎症や亀裂が起き、痛みやはれがある |
口角炎 | 唇の口角(両端)の部分に亀裂や炎症が起き、痛みやはれがある |
口唇ヘルペスの原因
単純ヘルペスウイルス(HSV)の主な感染ルートは、直接接触のほかウイルスを含む体液が付着した物品などです。唇の粘膜にウイルスが接触することで感染して体内に侵入し、神経節と呼ばれる部分に潜伏し続けます。
体には免疫力が備わっているためウイルスが活性化することはほとんどありませんが、かぜや疲れ、ストレス、睡眠不足、生理前などで体力が落ちると発症・再発することがあります。「熱の華」などともいわれています。
他の人にうつしてしまう場合も
水泡などの時期は直接触れることや唾液などから他の人にうつる場合があります。そのため、ピリピリ、チクチクといった感覚があった際には、早めの対処が必要です。
口唇ヘルペスの対処法
口唇ヘルペスに使用できる市販薬は、再発治療のための塗り薬のみです。効能・効果はいずれの製品も「口唇ヘルペスの再発(過去に診断・治療を受けた方に限る)」となっています。そのため、医師から口唇ヘルペスとの診断を受けたことがない人は購入することができません。
診断されたことがあるかどうかは、口頭での確認でよく、診断書などは必要ありません。ドラッグストアや調剤薬局などで購入する際は、診断されたことを薬剤師に伝え、市販薬の使用が可能であることを判断してもらうとよいでしょう。また6歳未満の乳幼児の場合、初めての感染の可能性が考えられるため、使用ができません。
受診をおすすめする場合
また単純ヘルペスウイルスとは異なる種類のヘルペスウイルスである場合、例えば、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)により発症する帯状疱疹などの場合は、医療機関での治療が必要です。体にピリピリ、チクチクとした違和感や疱疹がある場合は、すぐに病院に受診するようにしましょう。
口唇ヘルペスに有効な成分
口唇ヘルペスの再発治療薬の有効成分には、抗ウイルス薬のアシクロビルとビダラビンがあります。効き目の強さは、商品によって大きな差はないと考えられます。剤形としては多少のべたつきはあるものの、患部の保護力が高い軟膏と伸びが良いクリームがあり、自身の好みに合わせて選択しましょう。
口唇ヘルペスにおすすめの市販薬
1日1回~4回の軟膏タイプ
●有効成分に「ビダラビン」を配合した初めてのOTC医薬品です。
●有効成分「ビダラビン」は、口唇ヘルペスの再発に1日1〜4回の使用で、口唇ヘルペスの再発に優れた効果をあらわします。
●基剤にワセリンを使用し、患部をやさしく保護します。
1日3回~5回のクリームタイプ
●口唇ヘルペスとは、主に単純ヘルペスウイルス1型によって引き起こされるウイルス感染症で、多くは幼少期に初めて感染し(初感染)、ウイルスが潜伏します(潜伏感染)。ストレス等で免疫機能が低下するとウイルスが増殖し、唇やそのまわりに水疱(水ぶくれ)を形成します(再発)。
●ヘルペシアクリームは、抗ウイルス薬であるアシクロビルを配合し、口唇ヘルペス再発患者を対象とした治療薬です。アシクロビルは、ヘルペスウイルスの増殖を抑制し、再発した口唇ヘルペスを治療する、安全性の高い抗ウイルス薬です。
こんな症状は受診を
以下に1つでも当てはまる場合は、医療機関(皮膚科)を受診しましょう。
- 水疱が広範囲にわたっている
- 水疱が大きい(小豆大)
- 発熱や頭痛など他の症状がある
- 痛みが強い
口角炎、口唇ヘルペスのためのセルフケア
口角炎や口唇炎、口唇ヘルペスいずれも予防ができます。つらい症状にならないための予防を知っておきましょう。
唇の乾燥対策を
唇の皮膚粘膜は薄く、乾燥を感じやすい場所です。乾燥を感じ始めた場合は、リップクリームなどを活用して保湿することを心がけましょう。また唇をなめると反対に乾燥しやすくなります。
規則正しい生活で体調管理を
口角炎、口唇ヘルペスどちらも体調不良やストレスが原因となる場合があります。体力(免疫力)を落とさないように栄養バランスの良い食事や睡眠、適度な運動などで体調管理やストレスを溜めないように心がけましょう。
口唇ヘルペスになった後のセルフケア
口唇ヘルペスになった後は早めに適切な対処が必要です。適切な対処が遅れ、症状が悪化してしまったり、他の人にうつしてしまったりする場合がありますので、気をつけましょう。
水泡を破らない
口唇ヘルペスの水泡には多くのウイルスが含まれています。水泡を破ることで、ウイルスが広がり、他の人を感染させるリスクとなります。痛みやかゆみが気になっても、触らないようにし、自然に破れるのを待ちましょう。
患部や水泡には触らない
患部に触った場合は、すぐに石鹼で手を洗いましょう。単純ヘルペスウイルスは感染力が強く、他の人にうつしてしまう恐れがあります。
タオルや食器等の共用を避ける
タオルや衣類、スプーンやコップなどは患部に触れる可能性があります。患部に触れる可能性があるものは共用を避けましょう。また飲み物なども共有しないようにしましょう。
新生児への接触を避ける
新生児は免疫力が弱く、感染するとまれに全身に広がることがあります。口唇ヘルペスになった場合は、マスクをつけたり、顔を近づけ過ぎないようにしたりするなど対策しましょう。