急な下痢や腹痛で、市販薬を頼りにする方もいるでしょう。食べ過ぎや緊張などによる下痢には市販薬が役に立ちますが、感染性の下痢など、場合によっては下痢止めを使用することで、症状の悪化に繋がってしまうこともあります。また普段からお腹が弱い方は日頃から腸内環境(腸内フローラ)を整えることも大切です。今回は、下痢止め(止瀉薬)や整腸剤(整腸薬)の選び方について解説します。
この記事の監修者
薬局に勤務する現役薬剤師。横浜市西区薬剤師会理事。大手ドラッグストアでの勤務を経験後、処方せん調剤を主体とした保険薬局にてOTC医薬品の販売に取り組む。また、薬剤師や医薬品登録販売者向けにOTC医薬品の役立つ情報をSNSで発信するほか、メディア出演、全国各地での講演会、日経DIプレミアムでは連載を持つなど多方面で活動している。著書『薬局OTC販売マニュアル
臨床知識から商品選びまで分かる(日経BP)』
下痢や軟便の主な原因
下痢や軟便には食あたり、水あたり、食べ過ぎ(暴飲暴食)や冷え、消化不良、緊張、ウイルスや細菌感染など様々な原因が考えられます。下痢の種類の中でも食べ過ぎや冷え、緊張などによる下痢の場合などは下痢止めや整腸剤などで対処が可能です。
一方、細菌感染による下痢などは、腸管運動抑制成分などを配合した下痢止めの薬は使用を避ける必要があります。食中毒(細菌感染による下痢)の時などに下痢を止めてしまうと、病原菌が腸に長くとどまってしまい、回復が遅れてしまう恐れがあります。
主な原因
下痢や軟便の原因によっては、数日前から思い当たる原因を考えてみましょう。原因によって、下痢止めや整腸剤など薬の選択や対処法が異なります
【症状別】下痢・軟便に効く下痢止めなどの薬
下痢や軟便の原因や症状に応じて、選択できる成分や薬が異なるため、自身の症状を把握し、適切なお薬を選択しましょう。
下痢止めに含まれる主な成分
下痢止めは、その名の通り下痢を止める作用があります。下痢止めに含まれる主な成分には、腸管運動抑制成分や殺菌成分、収れん成分、ゲンノショウコなどの生薬成分などがあります。
軽度の食あたりや水あたりによる下痢の場合
腸管のぜん動運動を正常化する作用のある木クレオソートを配合した商品、殺菌作用のあるベルベリン塩化物などを配合した商品、下痢を止める作用をもたない整腸剤が使用できます。正露丸などに配合されている木クレオソートは腸管のぜん動運動を正常化する作用の他に、腸管内の水分量を調整する作用もあります。
ただし感染性の下痢が疑われる場合は安易に薬を使用して下痢を止めると細菌などが腸にとどまってしまうため、症状がひどい場合は早めに受診するようにしましょう。感染した原因菌によっては重症化するケースがあります。特に激しい腹痛や発熱、嘔吐などを伴う下痢の場合は注意しましょう。
食あたりや水あたりによる下痢に
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冷えや食べ過ぎなどによる下痢の場合
症状が比較的強く、早く下痢を止めたい場合は、ロペラミド塩酸塩を配合した商品を選ぶと良いでしょう。また腹痛がつらい下痢の場合は、鎮痛鎮痙作用もあるロートエキスを配合した商品を選ぶと良いでしょう。どちらも腸のぜん動運動を抑制することで、下痢を止めることが期待されています。
冷えや食べ過ぎなどによる下痢に
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整腸剤に含まれる主な成分
下痢や軟便などには整腸剤も選択肢の1つとなります。整腸剤には腸内の悪玉菌を抑えて、善玉菌を助ける整腸生菌が配合されており、腸の調子を整える作用があります。偏った食事や不規則な生活習慣に起因するような一過性の軽度の軟便や便秘、お腹の張り(腹部膨満感)などが生じた場合は、整腸剤を選ぶと良いでしょう。
また症状を抑える下痢止めと整腸剤を併用することもできます。
乳酸菌
主に小腸で働き、整腸作用が期待できるほか、悪玉菌の増殖を抑える効果が期待できます。一方で胃酸や熱に対する耐性は低いです。
ビフィズス菌
乳酸菌の一種で、主に大腸で働き、整腸作用が期待できるほか、悪玉菌の増殖を抑える効果が期待できます。一方で胃酸や熱に対する耐性は低く、生きたまま大腸まで届けることが難しいです。
納豆菌
主に上部消化管で働き、整腸作用が期待できるほか、ビフィズス菌などの善玉菌の増殖を助ける効果が期待できます。胃酸や熱に対する耐性は高いです。
酪酸菌
主に大腸で働き、整腸作用が期待できるほか、悪玉菌の増殖を抑える効果が期待できます。胃酸や熱に対する耐性は高く、生きたまま大腸まで届けることができます。
整腸剤を選ぶポイント
腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスには個人差があり、同様に効果が期待できる整腸生菌の種類にも個人差があります。
また整腸剤には主に、整腸生菌のみを配合した指定医薬部外品と整腸生菌にさらにビタミンなど他の成分を加えた医薬品があります。
症状が軽度、かつ軟便のみの場合
整腸生菌のみの指定医薬部外品を選ぶと良いでしょう。
軟便や消化不良、胃部・腹部膨満感など症状が複数ある場合
消化酵素や健胃生薬、ビタミンなどを配合する医薬品の中から選ぶと良いでしょう。
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腹部膨満感がある場合
整腸生菌に消泡剤のジメチルポリシロキサンを加えた商品も選択肢となります。
腹部膨満感の方に
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下痢に使用できる漢方薬は?
下痢や軟便の症状に漢方薬を試すことも選択肢となります。
下痢などに使用される漢方薬には、五苓散(ごれいさん)や胃苓湯(いれいとう)、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などが候補となります。
漢方処方 |
特徴 |
五苓散(ごれいさん) |
飲みすぎによる下痢、水様性の下痢の方に |
胃苓湯(いれいとう) |
急性胃腸炎、お腹が冷えて下痢になる方に |
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう) |
胃腸が弱く、下痢や便秘を繰り返す方に |
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) |
ストレスが原因で胃腸に不調を感じる方に |
下痢に使用できる漢方薬の
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下痢の症状に効く市販薬を選ぶ際の留意点
過敏性腸症候群(I B S)には
過敏性腸症候群に伴う下痢の場合は、医師の診断・治療を既に受けている人への販売に限り、再発時の治療薬としてセレキノンS(トリメブチンマレイン酸塩)などが販売されております。再発治療薬のため、診断・治療を受けたことがある人のみ購入することができる商品です。過敏性腸症候群の可能性があるといった診断をまだ受けていない方は、まずは医療機関を受診するようにしましょう。
自動車や機械の運転ができない下痢止めも
眠気に注意する市販薬は、鼻炎薬や風邪薬だけではありません。眠気が出る可能性があるロペラミド塩酸塩を配合した商品や目のまぶしさなどの恐れがあるロートエキスを配合した商品は、乗り物や機械類の運転操作をする人には販売できないため、注意しましょう。
小児や小中学生の下痢には
小児や小中学生向けには、小児用の下痢止めや整腸剤などが使用できますが、下痢による脱水の兆候が見られる場合などは特に注意が必要です。
急性で感染性胃腸炎などが疑われる場合は安易に下痢止めを使用することで、症状が悪化する恐れがあります。経口補水液(OS1など)を少しずつ飲ませるなどして脱水予防に努めつつ、速やかに医療機関に受診するように保護者は注意すべきでしょう。
<下痢止め、整腸剤の選び方>
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【選び方別】下痢や軟便に効くおすすめの市販薬
下痢止めの薬
腹痛を伴う下痢の場合
第2類医薬品
お腹がギュルギュルきたら、早めのストッパ!
突発性の下痢、痛みを伴う下痢によく効きます。
水がなくても口で溶かしてのめるので、電車の中など場所を選ばず服用できます。
水なし1錠で効く
眠くなる成分を含まない(ただし、運転・操作をしないこと)
第2類医薬品
●突発性の下痢や痛みを伴う下痢に素早くよく効きます。
●主成分のロートエキスが自律神経をコントロールして、腸の異常収縮を抑え、下痢の症状を鎮めます。
●タンニン酸が腸の粘膜に付着し腸の炎症を抑え、また分泌液の腸内への浸出を防ぎ、腸内の水分を減らします。
●ベルベリンが腸内細菌の増殖を防いだり、殺菌したりする働きがあり、下痢の原因になる菌を殺菌します。
●口の中で溶け、水なしでのめる、のみやすいバニラ風味の錠剤です。
冷えや暴飲暴食の下痢の場合
第❷類医薬品
下痢にすぐれた効きめをあらわすロペラミド塩酸塩を、薄いフィルム状の製剤に閉じ込めたお薬です。
口の中ですぐに溶け、水なしで服用可能な製剤ですので、どこでも手軽に服用することができます。
特長 1 突然の下痢に水なしでのめる
特長 2 腸の3つのトラブルに働きかけるロペラミド塩酸塩配合
第❷類医薬品
つらい下痢によく効く下痢止め
●塩酸ロペラミドが腸に直接作用して、高まったぜん動運動を抑え、下痢を改善します。
●塩酸ロペラミドが腸において水分・電解質の分泌を抑え、さらに腸への水分吸収を促進し、下痢を改善します。
●口の中でサッと溶ける錠剤です。
第❷類医薬品
●ピシャット下痢止めOD錠は、ロペラミド塩酸塩が腸に直接作用してぜん動運動を抑制し、
腸管内の水分分泌を抑制することで下痢を改善するお薬です。
●通勤・通学途中や会議中などの突然の下痢に、水なしでものむことができる口腔内崩壊錠(OD錠)で、
口の中でふわっと溶けるため、どこでも手軽に服用することができます。
●食べすぎ・飲みすぎや寝冷えによるつらい下痢には、1回1錠で効くピシャット下痢止めOD錠をおすすめします。
食あたり、水あたりによる下痢の場合
第2類医薬品
胃腸薬 正露丸は、100年以上前から、ご家庭で使用されている常備薬です。
特に食あたり、水あたり、消化不良といった食べ物、飲み物が原因で起こる軟便、
下痢およびストレス、かぜなどの原因で起こる軟便、下痢にすぐれた効き目を発揮し、
生薬が配合された水分を含んだやわらかい丸剤です。
第2類医薬品
胃腸薬 セイロガン糖衣Aは、100年以上前から使用されている正露丸の姉妹品で、ご家庭にて服用されている常備薬です。
生薬である主成分の日本薬局方(日局) 木(もく)クレオソートは腸の運動を止めることなく、腸内の水分バランスを調整し、おなかを正常な状態に戻します。
特に食あたり、水あたり、消化不良といった食べ物、飲み物が原因で起こる軟便、下痢、およびストレス、かぜなどの原因で起こる軟便、下痢にすぐれた効き目を発揮します。
本剤は日局 木(もく)クレオソートをはじめ、ゲンノショウコ末およびオウバク乾燥エキスなどの生薬を配合した、においがなく飲みやすい白い錠剤です。
第2類医薬品
下痢・食あたり・水あたり
● 塩化ベルベリンとゲンノショウコエキスによっておなかの調子を整え、下痢・食あたり・水あたり・軟便などに効果があります。
● 服用しやすいフィルムコーティング錠です。
小児用の下痢止めの薬
第2類医薬品
お子さまの下痢・食あたりに
大正下痢止め〈小児用〉は、服用させやすいバナナ風味の微粒剤で口の中でサッと溶けます。
3ヵ月以上の乳児から服用でき、5つの成分が効果的に下痢を改善します。
第2類医薬品
外出時の突然の下痢、痛みを伴う下痢によく効きます。
水がなくても口の中で溶かしてのめるので、試験や発表会、通学や旅行時にも場所を選ばず服用できます。
水なしでのめる
眠くなる成分を含まない
(ただし、運転・操作をしないこと)
軟便、腹部膨満感の場合(医薬部外品の整腸剤)
整腸生菌のみ配合
指定医薬部外品
便秘にも軟便にも効果を発揮、腸活※にも使える、家族で使える整腸剤
※整腸のこと
人と相性のいい乳酸菌が生きたまま届いて、省庁から台帳まで幅広く腸の調子を整えます。
5歳から飲める錠剤はお子様からお年寄りまで、家族でお飲みいただけます、
5歳未満のお子様や錠剤が苦手な方には、同じ有効成分で細粒タイプもあります。
ほんのり甘みがある整腸剤です。
指定医薬部外品
ビオスリーは小腸から大腸の部位ごとに働く3つの活性菌(「酪酸菌」、「乳酸菌」、「糖化菌」)を配合しています。
腸内フローラと大腸のバリア機能を改善することで、日ごろの便通を整えます。
便秘や軟便にも、日ごろのおなかのケアにも使えます。
のみやすい、やや甘みのある小粒の錠剤です。
軟便、腹部膨満感の場合(医薬品の整腸剤)
健胃生薬や制酸剤などを配合
第3類医薬品
大腸が気になり始めたら、「ザ・ガードコーワ整腸錠α³+」。
3つの生菌(納豆菌・乳酸菌・ビフィズス菌)と薬効成分が腸内環境を改善し、大腸の状態を正常に近づけてくれます。
特長1 3つの⽣菌が腸内環境を改善する
特長2 3つの作用を中心に弱った胃の働きを高め、大腸への負担を軽減します
特長3 腸内のガスが排出され、おなかのハリが改善されます
第3類医薬品
敏感なおなかの方のための乳酸菌と生薬配合整腸薬
特徴1 乳酸菌のはたらきで刺激に強い腸に
特徴2 腸の動きを正常化し敏感なおなかに効く
特徴3 弱いお腹を改善したい方、ストレスや飲酒などでお腹がゆるくなる方、お腹のハリが気になる方におススメです
ビタミンB2などを配合特に腹部膨満感(お腹の張り)が気になる方向け
第3類医薬品
おなかのハリ、オナラなどが気になる方に
水なしで噛んで飲める<ヨーグルト味>
●消泡剤(ジメチルポリシロキサン)が胃や腸内に発生したガスだまりをつぶし、おなかのガスだまり(膨満感)を改善します
●3種類の乳酸菌が、おなかの調子を整えます
●消化酵素(セルラーゼAP3)が食物繊維を分解し、ガスの発生を抑えます
第3類医薬品
ガスによるおなかのハリ※を改善!
●ビオフェルミン® ぽっこり整腸チュアブル® aは、2種類の乳酸菌(ビフィズス菌+ラクトミン)と生薬、消泡剤、ビタミンのはたらきにより、ガスによるおなかのハリ※を改善します。
●消泡剤が発生したガスの気泡をつぶし、生薬が腸のはたらきを整え便を出しやすくし、2種類の乳酸菌が悪玉菌の増殖を抑え、ガスの発生しにくい腸内環境に整えます。
●ビタミン(パントテン酸カルシウム)が腸内の乳酸菌の生育をサポートします。
●水なしで、かむか、口の中で溶かして服用できるヨーグルト風味のチュアブル錠です。
※腹部膨満感のこと
下痢に使用できる漢方薬
第2類医薬品
むくみ、頭痛、飲みすぎによる二日酔いに [4日分]
第2類医薬品
食あたり、暑気あたり、お腹が冷えて下痢になる方、急性胃腸炎に [3日分]
第2類医薬品
第2類医薬品
ストレスなどで胃の調子が悪い、下痢・軟便などといった症状に、漢方処方「半夏瀉心湯」が優れた効果をあらわします。
●ストレスなどで胃の調子が悪い、下痢・軟便、などといった症状に、漢方処方「半夏瀉心湯」が優れた効果をあらわします。
●不安や緊張を感じやすい神経症の方にも適したお薬です。
●体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがある方に適したお薬です。
●のみやすい黄かっ色の顆粒です。
下痢や軟便のときのセルフケアも重要!
下痢や軟便のときには多くの水分を失ったり、胃腸の不調から消化不良だったりと目に見えないところへの影響もあります。早期回復や症状を悪化させないためのセルフケアを覚えておくと良いでしょう。また症状を繰り返す方や普段からお腹が弱い方は日頃のセルフケアも重要です。
こまめな水分補給を
特に下痢の時は体外に排出される水分の量が普段よりも多くなり、脱水症状や栄養失調などになる可能性もあります。また水分だけではなく、電解質も失われるため、経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめに水分補給を心がけましょう。冷えているものは症状の悪化につながりやすいため、常温のものを飲まれると良いでしょう。
胃腸の消化を考えた食事を
下痢や軟便のときは胃腸が弱っていますので、胃腸に負担の少ない、消化の良い食べ物を摂りましょう。味の濃いものや辛いなどの刺激があるもの、油の多いものや生ものなどは避けると良いでしょう。
おかゆや野菜スープ、りんごなどは比較的胃腸への負担が少ないでしょう。
普段から腸内環境(腸内フローラ)を整えることも大切
規則正しい生活やバランスの良い食事など普段から腸内環境(腸内フローラ)を整えておくこと下痢や軟便にならないためのケアを心がけることも大切です。またお腹が弱く、下痢や軟便になりやすい方は日頃から整腸剤を摂ることも選択肢の1つです。整腸剤は長く飲み続けることで効かなくなるものではないため、習慣的に飲み続けると良いでしょう。
こんな症状は受診を
下痢を症状とする疾患には、潰瘍性大腸炎や出血性胃腸炎など様々あります。以下に1つでも当てはまる場合は、医療機関を受診しましょう。
- 吐き気や発熱、激しい腹痛などを伴う
- 2週間以上下痢が続いている
- 激しい下痢、血便、タール便、粘液便である
- 直近の海外渡航歴がある
- 脱水の兆候がある
- 過敏性腸症候群が疑われる(下痢と便秘を繰り返すなど)
- ガスがたまっていて出ない