薬剤師が教える!胃の不調におすすめの市販薬(胃腸薬)
胃の不調の症状は、胃の痛みやむかつき、胃もたれなど様々です。食べ過ぎ・飲み過ぎや偏った食事、ストレス、不規則な生活習慣が原因の一時的な症状であれば、市販の胃薬で様子を見ることができるでしょう。
ここでは、胃の不調の症状に効く市販薬(胃腸薬)の選び方のポイントについて解説、おすすめの市販薬を紹介します。
目次
どのようなときに胃腸薬を使うべき
胃の痛みやむかつき、胃もたれや消化不良といった不快な症状を解消させたいときに用いるのが胃腸薬です。
胃腸薬の選び方としては、症状の起きたタイミングが、空腹時か、食後かもポイントになります。痛みやむかつきは主に空腹時に、もたれや消化不良は主に飲食後に起こりやすいでしょう。
胃の不調の症状に効く市販薬の選び方
胃腸薬に含まれる成分には、胃酸分泌抑制成分、制酸成分、胃粘膜保護成分、胃腸鎮痛鎮痙成分、その他に健胃生薬・消化酵素などがあります。
これらの成分が複数配合されている市販薬(総合胃腸薬)が多く販売されており、胃痛、胸やけ、胃もたれ・胃部不快感、消化不良・食欲不振、腹部膨満感など効能は商品によって異なるものの幅広い症状に対応できます。
ここでは、主な成分ごとに、どのような胃の不調に効くのかをみていきましょう。
胃酸分泌抑制成分
症状が主に空腹時に表れる胃痛や胸やけなどでは胃酸の過剰分泌(胃酸過多)が疑われる場合があります。
この場合はファモチジンなどの「H2ブロッカー」を配合した胃腸薬や、ピレンゼピンなどの「M1ブロッカー」を配合した胃腸薬を選ぶと良いでしょう。いずれの成分も、胃酸の分泌を抑え、胃痛やむかつきなどに効果があります。
ファモチジン(H2ブロッカー)
H2ブロッカーのファモチジンは、胃酸が出すぎている胃痛に有力な選択肢となります。一方で市販薬では第一類医薬品となるため、薬剤師からの購入が必要です。
また副作用は比較的少ないとされているものの、
高齢者や妊娠・授乳婦、血液障害のある方などは服用が禁止されているなどの制限があります。※市販薬では高齢者65歳以上は要相談、80歳以上は服用不可
ピレンゼピン(M1ブロッカー)
M1ブロッカーのピレンゼピンは、胃痛やむかつき、吐き気などに効果があり、胃酸が出すぎている胃痛や胸焼けの症状がある方の選択肢になります。
ピレンゼピンが配合された胃腸薬は第2類医薬品のため薬剤師が不在の場合でも購入可能です。服用後の車・機械類の運転操作は禁止されています。また
排尿困難や緑内障には症状を悪化させる可能性があり、注意が必要です。
制酸成分
胃酸を中和することで胃粘膜への刺激を緩和し、胃痛や胸焼けなどを改善します。総合胃腸薬に含まれることが多いです。成分としては、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウムなどがあります。
胃粘膜保護成分
胃が弱っていると感じる場合やストレスなどで胃粘膜が傷害されている可能性があればスクラルファートなどの粘膜保護・修復成分やテプレノンなどの粘液分泌を促す成分を含む製品を選ぶと良いでしょう。
粘膜保護・修復成分のスクラルファートは、胃や十二指腸の炎症(胃炎、潰瘍等)を起こしている部分に保護層を形成し、胃液の消化から胃腸粘膜を保護します。
ただし、スクラルファートのような
アルミニウム含有製剤は透析を受けている方は服用が禁止されているため注意が必要です。
粘液分泌を促す成分のテプレノンは、胃の粘液を増加する作用や胃粘膜を保護する作用があります。副作用は少ないですが、まれに肝機能障害が起こる場合があります。また透析を受けている方でも服用できる商品があります。
胃腸鎮痛鎮痙成分
飲食後の急な胃痛、腹痛や試験の緊張による胃痛、腹痛など、胃腸の痙攣により生じる胃痛や差し込み(キューッと締め付けられるような痛みなど)には、「腹痛」にも効能がある胃腸鎮痛鎮痙成分のブチルスコポラミンを含む商品を選ぶと良いでしょう。
ブチルスコポラミンは、胃腸や子宮などの平滑筋のけいれんを抑えたり、胃酸分泌を抑えたりする作用があります。胃薬以外にも月経痛に特化した効能・効果のある市販薬(鎮痛薬 エルペインコーワ)にも配合されています。
ただし、ブチルスコポラミンは目のまぶしさなどがでるおそれから
服用後の車・機械類の運転操作は禁止されているので注意が必要です。
そのほか、「吐き気」を伴う胃痛などには、過剰な消化管運動を抑える局所麻酔成分のオキセサゼインを含む商品を選ぶと良いでしょう。
オキセサゼインは服用後の車・機械類の運転操作は可能です。一方で
妊婦の方は服用が禁止されているなど制限もあるので注意が必要です。
健胃生薬・消化酵素
普段は特に症状がない人が、食べ過ぎてしまったり、消化不良を起こしたケースでは、消化成分だけを配合した商品で十分対応ができるでしょう。いずれのケースにおいても、胃の不調の症状と、その原因や症状が出るタイミングなどをよく確認することが大切です。
健胃生薬は、胃液の分泌や消化など胃の機能を促進して、胃を元気にする生薬のことです。健胃生薬を配合した粉薬を飲みやすいようにオブラートに包んだりすると、苦みや香りの刺激が弱まってしまい、十分な効果が発揮できない場合があります。
消化酵素は炭水化物の分解に働くビオヂアスターゼやタンパク質の分解に働くプロザイム、脂質の分解に働くリパーゼなどがあります。これらは食べ物の分解酵素を補う目的で使用されます。
そのほかの成分としてウルソデオキシコール酸は、肝臓で作られている胆汁の分泌を促し、脂質の消化を助けるため、脂肪による胃もたれ、消化不良を改善します。なおウルソデオキシコールには胆汁を作る肝臓自体の働きを高める作用もあります。
種類 | 成分の例 | 特徴、効果など |
---|---|---|
胃酸分泌抑制成分(H2ブロッカー) | ファモチジン | H2受容体をブロックして胃酸分泌を抑える 第1類医薬品 |
胃酸分泌抑制成分(M1ブロッカー) | ピレンゼピン | M1受容体をブロックして胃酸分泌を抑える |
制酸成分 | 合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム | 胃酸を中和することで胃粘膜への刺激を緩和する |
胃粘膜保護成分 | スクラルファート、テプレノン | 胃粘膜の炎症・潰瘍がある部分を保護する |
胃腸鎮痛鎮痙成分 | ブチルスコポラミン | 胃腸や子宮などの平滑筋のけいれんを抑えたり胃酸分泌を抑える |
健胃生薬・消化酵素 | 健胃生薬 苦味性:オウバク、オウレン 芳香性:ケイヒ、コウボク 消化酵素 ビオジアスターゼ、リパーゼ |
健胃生薬:唾液や胃液の分泌を促進する 消化酵素:炭水化物、タンパク質、脂質の分解を助ける |
<胃腸薬の選び方>
【選び方別】胃の不調の症状におすすめの市販薬
胃酸分泌抑制成分配合の胃腸薬
など
胃腸粘膜保護成分配合の胃腸薬
など
胃腸鎮痛鎮痙成分等配合の胃腸薬
など
消化酵素のみを配合した胃腸薬
など
常備薬としての胃腸薬は総合胃腸薬
症状がないうちに常備薬として胃腸薬を買っておこうという場合は、複数の成分を配合し、効能効果が幅広い総合胃腸薬を選ぶと良いでしょう。 ただし胃の不調の症状がはっきりしている場合は、より症状にあった成分が入った胃腸薬を選ぶことを心がけましょう。
代表的な総合胃腸薬
など
透析療法を受けている方は要注意
胃薬に含まれることがあるスクラルファートやメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどのアルミニウム化合物は、腎機能が低下した人に長期投与すると蓄積し、アルミニウム脳症などを発症するリスクが高まります。
その為、アルミニウム化合物を配合した胃薬は、透析療法を受けている方は服用することができません。
小児の場合
第一三共胃腸薬プラス細粒など3歳から服用可能な製品がありますが、まずは小児科を受診しましょう。また、妊娠中の女性に対しても、服用が検討できる商品もありますが、まずは主治医への相談が大切です。
こんな症状は受診を
以下に1つでも当てはまる場合は、医療機関を受診しましょう。
- 突然、強い胃痛が生じた
- 冷や汗をかくような強い胃痛がある
- 胃痛以外に倦怠感、激しい吐き気などを伴う
- 喉が詰まる感じを伴う
- みぞおちの圧迫感がある
- 痛みがみぞおちや背中に広がる感じがする