食あたり
・生もの(刺身や生肉など)を食べた
・賞味期限や消費期限が過ぎた飲食物を食べた(または飲んだ)
急な下痢や腹痛で、市販薬を頼りにする方もいるでしょう。食べ過ぎや緊張などによる下痢には市販薬が役に立ちますが、感染性の下痢など、場合によっては下痢止めを使用することで、症状の悪化に繋がってしまうこともあります。また普段からお腹が弱い方は日頃から腸内環境(腸内フローラ)を整えることも大切です。今回は、下痢止め(止瀉薬)や整腸剤(整腸薬)の選び方について解説します。
目次
下痢や軟便には食あたり、水あたり、食べ過ぎ(暴飲暴食)や冷え、消化不良、緊張、ウイルスや細菌感染など様々な原因が考えられます。下痢の種類の中でも食べ過ぎや冷え、緊張などによる下痢の場合などは下痢止めや整腸剤などで対処が可能です。
一方、細菌感染による下痢などは、腸管運動抑制成分などを配合した下痢止めの薬は使用を避ける必要があります。食中毒(細菌感染による下痢)の時などに下痢を止めてしまうと、病原菌が腸に長くとどまってしまい、回復が遅れてしまう恐れがあります。
下痢や軟便の原因によっては、数日前から思い当たる原因を考えてみましょう。原因によって、下痢止めや整腸剤など薬の選択や対処法が異なります
・生もの(刺身や生肉など)を食べた
・賞味期限や消費期限が過ぎた飲食物を食べた(または飲んだ)
・国内外など旅行先で普段飲み慣れない水(水道水など)を飲んだ
・エアコンの温度の低い室内に長時間いた
・お腹を出して寝た
・焼肉や揚げ物などの油の多い食べ物を食べた
・スイーツやジュースなどの糖分が多い飲食物を食べた(または飲んだ)
・試験や面接、スポーツの試合などのとき
・大事な場面や通勤時など突然の腹痛
・風邪を引いたとき
・過敏性腸症候群(IBS)などの病気のとき
・薬の副作用
・牛乳やヨーグルトなどの乳製品を食べたとき
下痢や軟便の原因や症状に応じて、選択できる成分や薬が異なるため、自身の症状を把握し、適切なお薬を選択しましょう。
下痢止めは、その名の通り下痢を止める作用があります。下痢止めに含まれる主な成分には、腸管運動抑制成分や殺菌成分、収れん成分、ゲンノショウコなどの生薬成分などがあります。
腸管のぜん動運動を正常化する作用のある木クレオソートを配合した商品、殺菌作用のあるベルベリン塩化物などを配合した商品、下痢を止める作用をもたない整腸剤が使用できます。正露丸などに配合されている木クレオソートは腸管のぜん動運動を正常化する作用の他に、腸管内の水分量を調整する作用もあります。
ただし感染性の下痢が疑われる場合は安易に薬を使用して下痢を止めると細菌などが腸にとどまってしまうため、症状がひどい場合は早めに受診するようにしましょう。感染した原因菌によっては重症化するケースがあります。特に激しい腹痛や発熱、嘔吐などを伴う下痢の場合は注意しましょう。
症状が比較的強く、早く下痢を止めたい場合は、ロペラミド塩酸塩を配合した商品を選ぶと良いでしょう。また腹痛がつらい下痢の場合は、鎮痛鎮痙作用もあるロートエキスを配合した商品を選ぶと良いでしょう。どちらも腸のぜん動運動を抑制することで、下痢を止めることが期待されています。
下痢や軟便などには整腸剤も選択肢の1つとなります。整腸剤には腸内の悪玉菌を抑えて、善玉菌を助ける整腸生菌が配合されており、腸の調子を整える作用があります。偏った食事や不規則な生活習慣に起因するような一過性の軽度の軟便や便秘、お腹の張り(腹部膨満感)などが生じた場合は、整腸剤を選ぶと良いでしょう。
また症状を抑える下痢止めと整腸剤を併用することもできます。
主に小腸で働き、整腸作用が期待できるほか、悪玉菌の増殖を抑える効果が期待できます。一方で胃酸や熱に対する耐性は低いです。
乳酸菌の一種で、主に大腸で働き、整腸作用が期待できるほか、悪玉菌の増殖を抑える効果が期待できます。一方で胃酸や熱に対する耐性は低く、生きたまま大腸まで届けることが難しいです。
主に上部消化管で働き、整腸作用が期待できるほか、ビフィズス菌などの善玉菌の増殖を助ける効果が期待できます。胃酸や熱に対する耐性は高いです。
主に大腸で働き、整腸作用が期待できるほか、悪玉菌の増殖を抑える効果が期待できます。胃酸や熱に対する耐性は高く、生きたまま大腸まで届けることができます。
腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスには個人差があり、同様に効果が期待できる整腸生菌の種類にも個人差があります。
また整腸剤には主に、整腸生菌のみを配合した指定医薬部外品と整腸生菌にさらにビタミンなど他の成分を加えた医薬品があります。
整腸生菌のみの指定医薬部外品を選ぶと良いでしょう。
消化酵素や健胃生薬、ビタミンなどを配合する医薬品の中から選ぶと良いでしょう。
整腸生菌に消泡剤のジメチルポリシロキサンを加えた商品も選択肢となります。
下痢や軟便の症状に漢方薬を試すことも選択肢となります。
下痢などに使用される漢方薬には、五苓散(ごれいさん)や胃苓湯(いれいとう)、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などが候補となります。
漢方処方 | 特徴 |
---|---|
五苓散(ごれいさん) | 飲みすぎによる下痢、水様性の下痢の方に |
胃苓湯(いれいとう) | 急性胃腸炎、お腹が冷えて下痢になる方に |
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう) | 胃腸が弱く、下痢や便秘を繰り返す方に |
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) | ストレスが原因で胃腸に不調を感じる方に |
過敏性腸症候群に伴う下痢の場合は、医師の診断・治療を既に受けている人への販売に限り、再発時の治療薬としてセレキノンS(トリメブチンマレイン酸塩)などが販売されております。再発治療薬のため、診断・治療を受けたことがある人のみ購入することができる商品です。過敏性腸症候群の可能性があるといった診断をまだ受けていない方は、まずは医療機関を受診するようにしましょう。
眠気に注意する市販薬は、鼻炎薬や風邪薬だけではありません。眠気が出る可能性があるロペラミド塩酸塩を配合した商品や目のまぶしさなどの恐れがあるロートエキスを配合した商品は、乗り物や機械類の運転操作をする人には販売できないため、注意しましょう。
小児や小中学生向けには、小児用の下痢止めや整腸剤などが使用できますが、下痢による脱水の兆候が見られる場合などは特に注意が必要です。
急性で感染性胃腸炎などが疑われる場合は安易に下痢止めを使用することで、症状が悪化する恐れがあります。経口補水液(OS1など)を少しずつ飲ませるなどして脱水予防に努めつつ、速やかに医療機関に受診するように保護者は注意すべきでしょう。
<下痢止め、整腸剤の選び方>
下痢や軟便のときには多くの水分を失ったり、胃腸の不調から消化不良だったりと目に見えないところへの影響もあります。早期回復や症状を悪化させないためのセルフケアを覚えておくと良いでしょう。また症状を繰り返す方や普段からお腹が弱い方は日頃のセルフケアも重要です。
特に下痢の時は体外に排出される水分の量が普段よりも多くなり、脱水症状や栄養失調などになる可能性もあります。また水分だけではなく、電解質も失われるため、経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめに水分補給を心がけましょう。冷えているものは症状の悪化につながりやすいため、常温のものを飲まれると良いでしょう。
下痢や軟便のときは胃腸が弱っていますので、胃腸に負担の少ない、消化の良い食べ物を摂りましょう。味の濃いものや辛いなどの刺激があるもの、油の多いものや生ものなどは避けると良いでしょう。
おかゆや野菜スープ、りんごなどは比較的胃腸への負担が少ないでしょう。
規則正しい生活やバランスの良い食事など普段から腸内環境(腸内フローラ)を整えておくこと下痢や軟便にならないためのケアを心がけることも大切です。またお腹が弱く、下痢や軟便になりやすい方は日頃から整腸剤を摂ることも選択肢の1つです。整腸剤は長く飲み続けることで効かなくなるものではないため、習慣的に飲み続けると良いでしょう。
下痢を症状とする疾患には、潰瘍性大腸炎や出血性胃腸炎など様々あります。以下に1つでも当てはまる場合は、医療機関を受診しましょう。