薬剤師が教える!乗り物酔いにおすすめの市販薬
乗り物酔いを防止する市販薬、いわゆる「酔い止め」は医療用医薬品より製品ラインアップが豊富で、セルフメディケーションが比較的進んでいる領域といえます。「どの薬でも同じ」と思っている人も多いですが、商品によって特徴が異なるため、自身にあった酔い止めを選べると良いでしょう。
乗り物酔いの症状に効く市販薬の選び方
乗り物酔いの薬を購入するときは以下の点に注意して購入すると良いでしょう。
- 乗り物に乗っているとき以外にも「めまい」「はきけ」などの症状がないか
- 緑内障、前立腺肥大などの持病はないか
- 解熱鎮痛薬などの併用はないか
- 使用者の年齢
- 乗り物に乗る時間
乗り物に乗っているとき以外にも「めまい」「はきけ」などの症状がある場合
「めまい」や「はきけ」の症状の原因がわからないまま、酔い止めを購入しようとするケースがあります。酔い止めの効能効果は「乗物酔いによるめまい・はきけ・頭痛」に限られるため注意しましょう。
めまいやはきけはメニエール症候群など医療機関での治療が必要な場合があります。原因がわからない「めまい」「はきけ」などは、医療機関を受診しましょう。
緑内障、前立腺肥大などの持病がある場合
ほとんどの酔い止めには抗コリン成分や抗ヒスタミン成分といった緑内障や前立腺肥大に注意が必要な成分が配合されています。
そのため緑内障や排尿困難の症状がある人は、必ず購入前に薬剤師、医薬品登録販売者などに相談しましょう。
使用者の年齢によって選ぶ
酔い止めには小児用の商品や15歳以上からの大人用のもの、3歳から大人まで服用できるものなど、幅広くあります。特に小児の場合は年齢に注意して商品を選ぶようにしましょう。家族で使用する場合は、使用できる年齢が幅広い商品を選ぶと良いでしょう。
なお3歳未満の小児が使える商品はありません。3歳未満は前庭小脳が未発達のため、ほとんど乗り物酔いになることはありません。その為、3歳未満の小児がはきけなどを訴えた場合は、別の原因も考え、受診を検討しましょう。
服用回数によって選ぶ
酔い止めのほとんどが、眠気が出る恐れのある抗ヒスタミン成分を含んでいるため、作用している間は眠気が出たり、ぼーっとしてしまう可能性があります。
例えば、遠足で1~3時間のバスによる移動であれば、長時間作用する必要がないので、1日2~3回服用するタイプ(比較的作用時間の短い)の市販薬を選ぶことで目的地についてから眠くなったりする可能性を減らせるでしょう。飛行機に乗るなどの長時間の移動であれば作用時間の長い1日1回タイプを選ぶと良いでしょう。
酔い止めに含まれる主な成分のはたらき
酔い止めに含まれる主な成分には、抗コリン成分や抗ヒスタミン成分、局所麻酔成分、制吐作用のある抗めまい成分などが含まれています。
抗コリン成分
スコポラミンなどの抗コリン成分は消化管の運動を抑え、はきけを予防します。一方で、口の渇きや便秘、目のかすみやまぶしさなどに注意が必要です。
抗ヒスタミン成分
ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン成分はめまいやはきけなどの症状を緩和します。また乗り物酔いの治療だけでなく、予防にも効果があるとされています。一方で、眠気が出る恐れがあるので、注意が必要です。
局所麻酔成分
アミノ安息香酸エチルなどの局所麻酔成分は胃粘膜への麻酔作用で、はきけを抑えます。
成分 | 効果 | その他 |
---|---|---|
抗コリン成分(スコポラミンなど) | はきけを予防する | 緑内障や排尿困難の方は注意が必要 |
抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミンなど) | めまいやはきけなどを抑える | 緑内障や排尿困難の方は注意が必要 |
局所麻酔成分(アミノ安息香酸エチルなど) | はきけを抑える |
成分による乗り物酔いの薬の使い分け
乗物に乗る前に予防として服用する場合は、予防効果が高いスコポラミンなどの抗コリン成分が良いでしょう。乗り物酔いの症状が出てしまった後はジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン成分が適しています。これら両方の成分が配合された商品を選ぶことで、予防にも治療(症状を抑える)にも効果が期待できます。
予防 | 治療(症状を抑える) | |
---|---|---|
抗コリン成分(スコポラミンなど) | ◎ | △ |
抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミンなど) | ○ | ○ |
眠くなりにくい酔い止めが欲しい場合
抗ヒスタミン成分の代わりにジフェニドールを配合した商品が候補となります。ジフェニドールは平衡感覚にかかわる神経の働きをよくしたり、血流を改善したりする作用があり、内耳障害にもとづくめまいの効果があります。
市販薬では乗り物の運転が禁止されているものの、比較的眠気が少ないとされています。ただし抗コリン作用があるため緑内障や排尿困難に注意が必要です。
<酔い止めの選び方>
酔い止めの服用のタイミングは?
乗り物酔いの予防に用いる場合には、乗り物に乗る30分前に服用するようにしましょう。また症状が出てから服用することも可能です。
【選び方別】乗り物酔いに効くおすすめの市販薬
酔い止めは乗り物の乗車時間を考え、服用回数で選ぶことがおすすめです。
1日1回タイプ
1日2回タイプ
1日3回タイプ
眠気が少ないタイプ
バスや電車など移動中も旅行を楽しみたい方には眠気が比較的少ないタイプがおすすめです。
ファミリータイプ(1日2回)
お子様から大人まで家族などで一緒に使いたい方にはファミリータイプがおすすめです。
水なしで飲めるタイプ
乗物に乗って水がなかったり、お薬を飲みこむのが苦手なお子様には安心して服用できるチュアブルやドロップタイプがおすすめです。
乗り物に酔いにくくなるセルフケアも重要!
乗り物酔いはその日の体調や不安、緊張などの気持ちも影響します。薬以外の対処法もして多くと良いでしょう。
乗り物に乗る前(移動前)
日々の規則正しい生活や前日には十分な休息・睡眠を行っておきましょう。また食事は1時間前までに軽く摂っておくと良いでしょう。空腹や食べすぎには注意しましょう。
移動中
以下のようなことに気を付けると良いでしょう。
- 進行方向を向いた席に座る
- 読書やスマホ操作、ゲームなどは控える
- 近くではなく、地平線や水平線など遠くを見る
- 十分な換気を行う
また音楽を聴いたりして気を紛らわしたり、移動中は寝たりするのもよいでしょう。それでも乗り物酔いの症状が出るようなら、衣服のボタンやベルトを緩めたり、移動を中断し、休憩をとることをおすすめします。