薬剤師が教える!やけど(火傷)の症状に応じた対処法とおすすめの市販薬
やけど(火傷)は日常生活で最も多い怪我の1つで、範囲(患部の広さ)や深さ(皮膚損傷の度合い)に応じた治療が必要です。市販薬で対処が可能な場合と医療機関(皮膚科)の受診が必要な場合を正しく理解しましょう。またやけどは治療も大切ですが、やけどをした直後の応急処置がとても重要です。今回は、やけどの基礎知識や受診すべき症状、市販薬について解説していきます。
目次
やけどの原因と主な種類
やけどは、熱などによる皮膚や粘膜の外傷のことを言います。熱湯や油などの熱により生じるものや化学薬品、電気などが原因で生じるものも含まれます。
温熱やけど
高い温度の物質が、皮膚に一定時間以上接すると起こります。もちろん火災などの高温でもやけどになりますが、40~55度くらいのそれほど高い温度ではないものでもやけどになることがあります。
低温やけど(低温熱傷)
低い温度でも持続的に加熱されることでやけどになることがあります。例として、皮膚が薄い子供や高齢者の方、成人でも深く寝込んでいるときには、カイロや電気カーぺットなどに長時間接すると起こります。低温やけどは深いやけどが多いのが特徴です。
やけどの症状と対処法
やけどした直後から赤みや腫れが出てきて、その後もはれや水ぶくれ(水泡)が数日進行します。症状の深さはⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分類され、それぞれ症状や対処法が異なります。
症状の深さ(皮膚損傷の度合い)
深さは皮膚組織(皮膚は外側から、表皮・真皮・皮下組織で構成される)のどの部位まで損傷されているかで決定されます。Ⅰ度は表皮まで、Ⅱ度は真皮まで、Ⅲ度は皮下組織まで損傷が及んだものです。
Ⅰ度
皮膚が赤くなり、ヒリヒリと痛む程度で一番浅いやけどです。俗にいう「日焼け」はI度のやけどです。治療期間は1週間以内に自然に治ります。
Ⅱ度
皮膚に水ぶくれができ、激しい痛みを伴う、中間の深さのやけどです。はれや強い痛みがあります。またⅡ度には真皮表層までの「浅達性Ⅱ度」と真皮深層までの「深達性Ⅱ度」の2種類の状態があり、それぞれで患部の状態や治療にかかる期間も異なります。
Ⅲ度
最も深いやけどで、水ぶくれにならずに皮膚が真っ白になったり、黒く焦げたりしてしまいます。Ⅲ度のやけどでは、知覚が損傷して、痛みをあまり感じなくなります。
症状の深さ | 主な症状 | 治療期間 |
---|---|---|
I度 |
|
1週間以内 |
浅達性Ⅱ度 |
|
2週間程度 |
深達性Ⅱ度 |
|
2週間から数週間 |
Ⅲ度 |
|
長期間 |
症状の範囲(患部の広さ)
やけどは症状の深さだけではなく、範囲の広さでも重症度を確認する必要があります。大人の場合は全身の20%以上、子どもの場合は10%以上の深達性Ⅱ度以上のやけどを負った場合、広範囲のやけどと言われており、合併症などを起こす可能性があります。
対処法
やけどは症状の深さによって、その対処法が異なります。適切な対処を行わないと感染症などの合併症を起こす可能性があるため、気を付けましょう。
市販薬で対処が可能
市販薬で様子を見ることができるのは、Ⅰ度のやけど(赤みやヒリヒリ感、熱感はあるが、水ぶくれはない:軽度のやけど)の場合のみです。
医療機関(皮膚科)の受診が必要
Ⅱ度以上のやけどや広範囲のやけどなど症状がひどい場合は、応急処置をした後、すみやかに医療機関を受診しましょう。症状がかなりひどい場合など、必要に応じて救急車を呼ぶことも検討してください。
症状の深さ | 対処法 |
---|---|
I度 | 市販薬の使用が検討できる |
Ⅱ度 | 医療機関の受診が必要 |
Ⅲ度 | 医療機関の受診が必要 |
やけどしたときの応急処置
やけどは市販薬や医療機関の受診などの対処も必要ですが、それ以前にやけど直後の応急処置も重要です。やけどをしたら直ちに流水で患部を冷やしましょう。冷やすことによりやけどが深くなるのを防ぎ、痛みを和らげることができます。部位や範囲にもよりますが、水道水で5分から30分ほどを目安に冷やしましょう。小範囲であれば水道水で、広範囲であればお風呂のシャワーで冷やすとよいでしょう。
応急処置後に市販薬で対処できる場合
感染症などの合併症や化膿などの予防をするために、抗生物質や皮膚の保護保護作用のある酸化亜鉛などの成分を配合した皮膚薬で様子を見ます。症状が軽度の場合は、漢方の紫雲膏(しうんこう)や皮膚保護作用がある白色ワセリンも選択肢です。
ただし痛みが緩和されなかったり、症状が悪化したりする場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。またやけどの跡が気になるという方には、ヘパリン類似物質を配合した皮膚薬も選択肢となります。
<やけどに使用できる市販薬に配合される成分>
分類 | 成分例 | 特徴 |
---|---|---|
抗生物質 |
|
やけどによる化膿予防、治療 |
皮膚の保湿・保護 |
|
皮膚の乾燥を防ぎ、保護 |
殺菌消毒 |
|
患部の殺菌・消毒 |
漢方 |
|
やけどなどの皮膚症状に適応した生薬を配合 |
水ぶくれ(水泡)
やけどの症状がひどい(Ⅱ度)の場合は、赤みや痛みのあとに、水ぶくれができることがあります。水ぶくれは傷ついた皮膚の細胞から出た液体(タンパク質や水分などが混ざった透明の液体)が表皮内などに溜まっている状態です。傷の修復を促し、皮膚を守る役割があります。
水ぶくれの対処法
水ぶくれができた場合は市販薬など、自身で治療することはできません。水ぶくれはできるだけ破らないように、絆創膏やガーゼなどで保護して、医療機関(皮膚科)を受診しましょう。
服を脱ぐ、または脱がせる際に水ぶくれを破いてしまう場合があります。服の上からやけどをした場合は、服を着たまま水道水で冷やすとよいでしょう。女性はストッキングを無理に脱ごうとすると、一緒に水ぶくれが破れる場合があるため、注意が必要です。
水ぶくれを破ってしまった場合
衣服の着脱や気づかないうちに水ぶくれを破いてしまった場合は皮膚をはがさず、細菌の感染を防ぐため患部を清潔に保ち、絆創膏やガーゼなどで患部を保護して、早めに医療機関を受診しましょう。
水ぶくれはなぜ破ってはだめなの?
水ぶくれは細菌の侵入を防ぐ役割があります。水ぶくれを破ると、ジュクジュクした傷となり、痛みを感じるだけではなく、乾燥などの刺激によって症状が悪化する恐れがあります。
<やけどのくすりの選び方>
【選び方別】やけどの症状におすすめの市販薬
やけどによる化膿予防、治療
ドルマイシン軟膏は抗菌作用をもつ両抗生物質(コリスチン硫酸塩、バシトラシン)を配合し、グラム陽性・陰性菌による単独又は混合感染症はもちろん、一般外部疾患の感染予防並びに治療に効果を発揮する皮膚疾患治療剤です。
皮膚の乾燥を防ぎ、保護
ひりひり痛みかさつく肌を効果的に治療します。
しみにくい軟膏タイプ。
パンパス軟膏は、炎症を起こした日やけ、やけどを効果的に治療します。酸化亜鉛が炎症を抑え、保護し、フェノールやイソプロピルメチルフェノールが殺菌・消毒し、化膿を防ぎます。
サリチル酸が角質を軟化、ヨークレシチンが血行を良くし、治りを早めます。
クリームのように柔かく、しみにくい軟膏タイプの医薬品です。
軽度のやけどに
伸びのよい軟膏剤
●きり傷、すり傷、さし傷、かき傷、靴ずれ、軽度のやけどに
●創傷面の殺菌・消毒に
●ご家庭の常備薬として、またスポーツ時や旅行の際の携帯薬に
定番の傷ケアだけではありません。
切傷、すり傷はもちろん、日常で起こる軽度のやけど、
日やけ・雪やけによる炎症など、幅広くご使用いただけます。
特長
1.殺菌力を高めるため、 3つの殺菌有効成分を配合しています。
2.天然ハーブオイル(香料)、動物性油、鉱物油のすぐれた混合基剤を使用。
酸化亜鉛を微粉化しているので肌に白く残りません。
3.ジュクジュク、カサカサの両方の患部に使用できるので、ご家庭の常備薬としてご活用いただけます。
患部の殺菌・消毒
殺菌成分配合の軟膏が患部を覆ってケアします。
・ひび、あかぎれに
・すりきず、きりきずに
・ニキビ、吹き出物に
・軽いやけどに
やけどなどの皮膚症状に適応した生薬を配合
ひどくなって、掻きこわす前に
●生薬のシコンとトウキから有効成分を抽出した、漢方処方(紫雲膏)の軟膏です
●患部のうるおいを守りながら炎症を鎮めるので、何度も繰り返す湿疹・皮膚炎を、ひどくなる前に治します
●皮膚の再生を促進し、傷ついた皮膚をなめらかにととのえます
やけどの跡のケア
ヘパリン類似物質を配合
やけどの予防とセルフケア
まずはやけどにならないことが大切ですので、予防方法についても考える必要があります。小さな子どもや高齢者がいる方は、特に十分に気をつけましょう。
生活習慣の見直し
よくある事例では以下のような原因でやけどが起こります。生活習慣を見直し、事前に対策を行うことでやけどを予防することができます。
シーン | 対処法 | |
---|---|---|
料理中 | 油はねなど | 腕カバーなどを使用 |
炊飯器 | 炊飯時の蒸気に触れる | 子どもの手の届かない場所に置く |
鍋や電気ケトル(ポット)など | 持ち運び時や子どもが触れる | 子どもの手の届かない場所に置く |
アイロン | 子どもが触れる | 子どもの近くで使用しない、使用後は手の届かない場所に置く |
ファンヒーターやストーブ | 触れる | 周りを柵などで囲う |
熱い飲み物 | 熱い飲み物がこぼれた時や子どもが触れる | 不安定な場所に置かない、子どもの手の届かない場所に置く |
低温やけどの予防
低温やけどは長時間接触することで起こります。暖房器具など長時間の使用を避けましょう。特に皮膚の薄い子どもや高齢者、糖尿病の方などは注意しましょう。健康な大人の方でも、使用中の睡眠には注意が必要です。
対処法 | |
---|---|
カイロ | 衣服の上から使用(直接の使用は避ける) |
電気カーペット、こたつなど | 使用したままの睡眠を避け、タイマー機能を活用 |
湯たんぽなど | 就寝前に布団から出す |
やけどのあとのセルフケア
やけどのあとはまず冷やす、市販薬でケアする、医療機関を受診するなどを伝えましたが、その他にもできることはあります。
モイストヒーリング(湿潤療法)でケア
Ⅰ度の軽度のやけどに限り、モイストヒーリングでケアすることができます。患部を冷やしたあとに、キズパワーパッド(バンドエイド)などのハイドロコロイド素材の絆創膏で皮膚を保護することで、症状を緩和し、やけどの回復を促すことができます。
やけどの跡を残さないためのケア
やけどは傷跡が残ってしまうことがあります。傷跡のケアにも市販薬は有効です。ヘパリン類似物質などが配合される市販薬を使用することで、傷跡になった皮膚のターンオーバー(新陳代謝)を促すことができます。
こんな症状は受診を
以下に1つでも当てはまる場合は、医療機関(皮膚科)を受診しましょう。
- 水ぶくれがある(Ⅱ度以上のやけど)
- 広範囲のやけど
- 熱以外が原因のやけど(電気やけど、気道やけどなど)
- 乳幼児や高齢者