薬剤師が教える!薄毛・脱毛症の改善が期待できる医薬品/発毛剤と育毛剤の違いとは
「最近、髪の毛が薄くなった」「ハリやコシが無くなり、抜け毛が気になる」「脱毛症を改善したい」といった理由から、ドラッグストア、ネットショップなどで市販の発毛剤や育毛剤を購入している方もいることでしょう。また、CMでもリアップ(大正製薬)やスカルプD(アンファー)、リザレック(興和)などが「ミノキシジル配合」などと紹介しており、その成分を目にする機会も増えています。
しかし、発毛剤や育毛剤といっても様々な種類があり、その選び方や特徴、効果などを知る機会は多くないのが実情でしょう。そこで今回は、発毛剤と育毛剤の違いや、薄毛の改善を期待できるおすすめの発毛剤について、その選び方や特徴、効果などを分かりやすく解説します。
目次
薄毛、脱毛症の原因
毛髪は主に成長期、後退期、休止期の3つのサイクル(毛周期)で生え替わりを行っています。薄毛や脱毛症になる方は、この毛周期を繰り返すうちに、成長期の期間が短くなることで毛包も小さくなり、毛髪が細く短くなっていく(軟毛化)現象が生じます。
毛周期が乱れる主な原因としては、男性ホルモンと遺伝の関係やストレス、生活習慣の乱れ、加齢、頭皮疾患などであり、男性ホルモンと遺伝が関係した脱毛症のことを男性型脱毛症、別の言い方でAGA(Androgenetic Alopecia)といいます。
男性の場合 | 女性の場合 | 特徴 |
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育毛剤と発毛剤って違うの?
育毛剤と発毛剤、その2つを混同している方は少なくないと思いますが、実は明確な違いがあります。2つの違いを理解し、自身の目的に合った方を選択すると良いでしょう。
育毛剤とは
育毛剤は分類としては「医薬部外品」となり、医薬品と違い、「治療」を目的とした使い方ではなく、「防止・衛生」が目的となります。そのため、「発毛」が目的ではなく、抜け毛の予防、つまり今の毛髪を抜けにくくする、育ちやすくすることを期待されている商品です。
その作用としても、発毛に直接はたらくわけではなく、頭皮の健康を保つはたらきをします。
発毛剤とは
一方、「医薬品」である発毛剤は「治療」を目的とした使い方であり、発毛促進の効果を期待されています。したがって、毛周期を正常化し、新たに毛髪を生やす、生えた毛髪を育てて、抜けにくくすることが期待されている商品です。
育毛剤と発毛剤を併用使いで、効果2倍?
それぞれの目的と作用が違うのであれば、併用すればいいのでは?と思うかもしれません。しかし、併用することによって、副作用のリスクが高まる可能性もあります。
また使用上の注意には、併用することを避けるよう記載をしているものが多いです。購入・使用する際に使用上の注意を確認する、または医師、薬剤師などに確認するなど個人で判断をしないように注意しましょう。
リアップX5チャージ(大正製薬)使用上の注意抜粋
してはいけないこと③本剤を使用する場合は、他の育毛剤及び外用剤(軟膏、液剤等)の頭皮への使用は、さけてください。
また、これらを使用する場合は本剤の使用を中止してください。
(これらの薬剤は本剤の吸収に影響を及ぼす可能性があります。)
【目的別】薄毛の改善が期待できるおすすめの発毛剤
市販薬には主に「ミノキシジル」と「カルプロニウム」の2種類の成分が主成分として配合されており、それぞれ適応する症状は異なります。自身の症状に合った方を選択して、使用していただくと良いでしょう。
ここでは2種類の成分が効能に持つ症状やそれぞれの成分の特長について解説します。
壮年性脱毛症の場合
市販薬の脱毛症治療薬としてよく使われているのは、ミノキシジルが配合された発毛剤です。ミノキシジルは当初、高血圧の治療薬(内服薬)として、処方薬(医療用医薬品)で使われていましたが、服用中の患者に多毛が認められたことから、外用の発毛促進剤として新たに開発が進められ、市販薬として発売されました。
ミノキシジルが効能を持つ症状は1つで、壮年期(30~40代)に多く見られる脱毛症、つまり壮年性脱毛症のみとなります。
ミノキシジルの特徴
ミノキシジルは毛周期の成長期を延長する作用があると考えられており、診療ガイドライン等でもミノキシジルは推奨されている成分です。ミノキシジル配合外用薬には、男性向けには濃度5%の商品と濃度1%の商品があり、女性向けには濃度1%の商品があります。
購入時に確認いただきたい項目はおおむね共通しておりますが、壮年性脱毛症以外での使用は禁止(してはいけない)とされています。また市販薬では、20歳以上から使用することができます。
ミノキシジルの効果は?
毛髪の成長は毛周期に関係するため、時間がかかります。例としてリアップシリーズでの臨床試験において、ミノキシジル濃度5%では、約4か月使用することで有効性が認められており、ミノキシジル濃度1%では、約6か月使用することで有効性が認められています。すぐに効果が表れるものではないため、商品の用法用量を守って、正しく使用すること、しっかりと継続使用することが重要です。
効果の目安となるポイントは?
とはいえ、効果の実感がないとなかなか継続しづらいものだと思います。ポイントとなるのは「抜け毛の本数が減っているか」「うぶ毛や、細い毛が増えているか」などを確認し、効果実感の目安にすると良いでしょう。
またミノキシジルを5%配合する商品を6か月使用しても効果が得られない場合は、壮年性脱毛症以外である可能性が疑われます。その場合は、医療機関(皮膚科)を受診するか、薬剤師に相談するようにしましょう。その他、薬剤を使用した部分にかゆみや炎症が生じたら、すぐに使用を中止してください。
ミノキシジルを配合する発毛剤の商品選定のポイント
ミノキシジル配合の発毛剤は第1類医薬品に指定されているため、薬剤師に相談のうえ購入しましょう。また、ミノキシジルを配合する発毛剤は、各メーカーから複数のシリーズが販売されています。ミノキシジルの濃度(配合量)だけでは一見変わりがなくても、他の配合されている成分や添加物、塗布のしやすさ(使いやすさ)、価格などを総合的に見て決めると良いでしょう。
<例>
リアップX5チャージ | リアップX5 | |
---|---|---|
有効成分数 | 8種 | 1種 |
主成分 | ミノキシジル (濃度5%) |
ミノキシジル (濃度5%) |
抜け毛予防サポート成分 | 6種 | ― |
育毛サポート成分 | 1種 | ― |
内容量 | 60mL | 60mL |
価格 | 8,140 円(税込) | 5,980 円(税込) |
※価格は「大正ダイレクト」を参考
壮年性脱毛症が原因ではない場合
壮年性脱毛症には、まずはミノキシジルを配合する発毛剤が推奨されますが、もう1つの選択肢として、カルプロニウムを配合する発毛剤があります。
カルプロニウムが効能を持つ症状は複数あります。壮年性脱毛症はもちろん、円形脱毛症、びまん性脱毛症、粃糠(ひこう)性脱毛症にも効能があります。また、ふけやかゆみ、病後・産後の脱毛にも使用が可能です。
症状 | 特徴 |
---|---|
壮年性脱毛症 | 壮年期(30~40代)に多く見られる |
円形脱毛症 | 毛髪の一部が円形状に抜ける |
びまん性脱毛症 |
毛髪の密度が全体的に薄くなる ・男性の場合:頭頂部を中心に脱毛が見られることが多い ・女性の場合:毛髪全体のボリュームが少なくなる |
粃糠(ひこう)性脱毛症 | 頭皮の全体に細かい灰白色のフケが発生し、毛髪が薄くなる |
カルプロニウムの特徴
カルプロニウムは、皮膚の血管を拡張して血流をよくする作用があります。頭皮に塗れば、機能低下状態にある毛根が活発になり、脱毛防止、発毛促進につながります。
男女兼用で、商品によっては年齢制限がなく子供にも使用できます。処方薬(医療用医薬品)でもカルプロニウムは使用されますが、その濃度は5%です(市販薬では濃度が高い商品で2%)。
発毛剤を使用する際のポイント
頭皮をマッサージする場合は、薬液を使用(塗布)する前に行いましょう。塗布後にマッサージを行うと指や毛髪に薬液が付着してしまい、塗布量が規定の量よりも少なくなってしまいます。十分な効果が得られない可能性があるため、頭皮マッサージは薬剤を使用する前がおすすめです。
整髪料を使用する場合は、薬液の吸収を妨げないように薬液の塗布後に使用しましょう。
処方薬(医療用医薬品)ではミノキシジル、カルプロニウム以外の選択肢も
処方薬では、AGAの選択肢として、フィナステリドやデュタステリドを配合する内服薬などもあります。内服薬は頭皮に塗布する外用薬と異なり、頭髪だけでなく、体全体の体毛が濃くなる傾向もあります。またAGA治療薬は保険適用外の自由診療となっています。
<発毛剤の選び方>
【選び方別】薄毛の改善が期待できる発毛剤としておすすめの市販薬
ミノキシジルを配合する発毛剤
ミノキシジル5%
ミノキシジル1%
カルプロニウムを配合する発毛剤
カルプロニウム2%
カルプロニウム1%
セルフケアも重要!
薄毛や脱毛症などの対策はくすりに限らず、普段の生活習慣の見直しを行うことも有効です。まずは普段の生活を見直すことから始め、市販薬の使用を選択肢の1つとして考えてみてはいかがでしょうか。
自身に合ったストレスケアを!
学校や職場、家庭など、ストレスを感じてしまうシーンは様々あると思います。まずはストレスの原因となることから距離を置くことを考えてみましょう。
ただし、難しい場合もあると思います。その場合は、自身に合ったストレス発散方法を見つけると良いでしょう。食事や睡眠、入浴、マッサージ、趣味を行うなど試してみましょう。
食生活の見直しを!
髪の毛はアミノ酸を含むたんぱく質がもととなり、ビタミンやミネラルなども成長に必要な栄養です。
学校や仕事などで忙しい方も多いと思いますが、ファストフードやコンビニの弁当などを控え、バランスの良い食生活を意識することも大切です。
頭皮ケアはセルフケアの基本!
基本的なセルフケアとして、毎日、洗髪を行っている方がほとんどだと思います。洗髪の方法や使用するシャンプーなども大切なことです。
正しい洗髪方法を理解しよう
頭皮は自身では目に見えないため、気になったり、意識したりする方は少なくないと思います。ただし意識しすぎて、1日に何度も洗髪したり、ゴシゴシ洗ったりするのは、頭皮の乾燥や傷をつけることになり、防御機能を低下させます。
基本的には1日1回、指の腹でやさしく洗髪すると良いでしょう。また時間がある時は頭皮をマッサージすることで血行が促進しますので、試してみてください。
正しいシャンプーの使用を理解しよう
シャンプーやコンディショナー・リンスを洗い流す際は丁寧に行いましょう。流し残しがあると頭皮の毛穴につまり、炎症を起こしてしまいます。
また頭皮に炎症などがある場合は、低刺激シャンプーやスカルプシャンプーを使うと良いでしょう。スカルプシャンプーは、頭皮にうるおいを与え、皮脂や汚れなどをしっかり落としてくれます。
毛穴のつまりや乾燥、血流の低下などが原因で頭皮の状態が悪化すると薄毛や脱毛症の原因となります。
こんな症状は受診を
以下に1つでも当てはまる場合は、医療機関(皮膚科)を受診しましょう。
- 小児の脱毛
- フケがひどい
- 医薬品の使用がきっかけの脱毛
- 脱毛が急激
- 脱毛だけでなく倦怠感など身体に他の症状がある