薬剤師が教える!胃の不調におすすめの市販薬(胃腸薬)

更新日: 2024年12月02日

胃の不調の症状は、胃の痛みやむかつき、胃もたれなど様々です。食べ過ぎ・飲み過ぎや偏った食事、ストレス、不規則な生活習慣が原因の一時的な症状であれば、市販の胃薬で様子を見ることができるでしょう。

ここでは、胃の不調の症状に効く市販薬(胃腸薬)の選び方のポイントについて解説、おすすめの市販薬を紹介します。

この記事の監修者
鈴木 伸悟
薬局に勤務する現役薬剤師。横浜市西区薬剤師会理事。大手ドラッグストアでの勤務を経験後、処方せん調剤を主体とした保険薬局にてOTC医薬品の販売に取り組む。また、薬剤師や医薬品登録販売者向けにOTC医薬品の役立つ情報をSNSで発信するほか、メディア出演、全国各地での講演会、日経DIプレミアムでは連載を持つなど多方面で活動している。著書『薬局OTC販売マニュアル 臨床知識から商品選びまで分かる(日経BP)』

どのようなときに胃腸薬を使うべき

胃の痛みやむかつき、胃もたれや消化不良といった不快な症状を解消させたいときに用いるのが胃腸薬です。
胃腸薬の選び方としては、症状の起きたタイミングが、空腹時か、食後かもポイントになります。痛みやむかつきは主に空腹時に、もたれや消化不良は主に飲食後に起こりやすいでしょう。

胃の不調の症状に効く市販薬の選び方

胃腸薬に含まれる成分には、胃酸分泌抑制成分、制酸成分、胃粘膜保護成分、胃腸鎮痛鎮痙成分、その他に健胃生薬・消化酵素などがあります。
これらの成分が複数配合されている市販薬(総合胃腸薬)が多く販売されており、胃痛、胸やけ、胃もたれ・胃部不快感、消化不良・食欲不振、腹部膨満感など効能は商品によって異なるものの幅広い症状に対応できます。

ここでは、主な成分ごとに、どのような胃の不調に効くのかをみていきましょう。

胃酸分泌抑制成分

症状が主に空腹時に表れる胃痛や胸やけなどでは胃酸の過剰分泌(胃酸過多)が疑われる場合があります。
この場合はファモチジンなどの「H2ブロッカー」を配合した胃腸薬や、ピレンゼピンなどの「M1ブロッカー」を配合した胃腸薬を選ぶと良いでしょう。いずれの成分も、胃酸の分泌を抑え、胃痛やむかつきなどに効果があります。

ファモチジン(H2ブロッカー)

H2ブロッカーのファモチジンは、胃酸が出すぎている胃痛に有力な選択肢となります。一方で市販薬では第一類医薬品となるため、薬剤師からの購入が必要です。
また副作用は比較的少ないとされているものの、 高齢者や妊娠・授乳婦、血液障害のある方などは服用が禁止されているなどの制限があります。※市販薬では高齢者65歳以上は要相談、80歳以上は服用不可

ピレンゼピン(M1ブロッカー)

M1ブロッカーのピレンゼピンは、胃痛やむかつき、吐き気などに効果があり、胃酸が出すぎている胃痛や胸焼けの症状がある方の選択肢になります。
ピレンゼピンが配合された胃腸薬は第2類医薬品のため薬剤師が不在の場合でも購入可能です。服用後の車・機械類の運転操作は禁止されています。また 排尿困難や緑内障には症状を悪化させる可能性があり、注意が必要です。

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制酸成分

胃酸を中和することで胃粘膜への刺激を緩和し、胃痛や胸焼けなどを改善します。総合胃腸薬に含まれることが多いです。成分としては、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウムなどがあります。

胃粘膜保護成分

胃が弱っていると感じる場合やストレスなどで胃粘膜が傷害されている可能性があればスクラルファートなどの粘膜保護・修復成分やテプレノンなどの粘液分泌を促す成分を含む製品を選ぶと良いでしょう。

粘膜保護・修復成分のスクラルファートは、胃や十二指腸の炎症(胃炎、潰瘍等)を起こしている部分に保護層を形成し、胃液の消化から胃腸粘膜を保護します。
ただし、スクラルファートのような アルミニウム含有製剤は透析を受けている方は服用が禁止されているため注意が必要です。

粘液分泌を促す成分のテプレノンは、胃の粘液を増加する作用や胃粘膜を保護する作用があります。副作用は少ないですが、まれに肝機能障害が起こる場合があります。また透析を受けている方でも服用できる商品があります。

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胃腸鎮痛鎮痙成分

飲食後の急な胃痛、腹痛や試験の緊張による胃痛、腹痛など、胃腸の痙攣により生じる胃痛や差し込み(キューッと締め付けられるような痛みなど)には、「腹痛」にも効能がある胃腸鎮痛鎮痙成分のブチルスコポラミンを含む商品を選ぶと良いでしょう。

ブチルスコポラミンは、胃腸や子宮などの平滑筋のけいれんを抑えたり、胃酸分泌を抑えたりする作用があります。胃薬以外にも月経痛に特化した効能・効果のある市販薬(鎮痛薬 エルペインコーワ)にも配合されています。
ただし、ブチルスコポラミンは目のまぶしさなどがでるおそれから 服用後の車・機械類の運転操作は禁止されているので注意が必要です。

そのほか、「吐き気」を伴う胃痛などには、過剰な消化管運動を抑える局所麻酔成分のオキセサゼインを含む商品を選ぶと良いでしょう。
オキセサゼインは服用後の車・機械類の運転操作は可能です。一方で 妊婦の方は服用が禁止されているなど制限もあるので注意が必要です。

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健胃生薬・消化酵素

普段は特に症状がない人が、食べ過ぎてしまったり、消化不良を起こしたケースでは、消化成分だけを配合した商品で十分対応ができるでしょう。いずれのケースにおいても、胃の不調の症状と、その原因や症状が出るタイミングなどをよく確認することが大切です。

健胃生薬は、胃液の分泌や消化など胃の機能を促進して、胃を元気にする生薬のことです。健胃生薬を配合した粉薬を飲みやすいようにオブラートに包んだりすると、苦みや香りの刺激が弱まってしまい、十分な効果が発揮できない場合があります。

消化酵素は炭水化物の分解に働くビオヂアスターゼやタンパク質の分解に働くプロザイム、脂質の分解に働くリパーゼなどがあります。これらは食べ物の分解酵素を補う目的で使用されます。

そのほかの成分としてウルソデオキシコール酸は、肝臓で作られている胆汁の分泌を促し、脂質の消化を助けるため、脂肪による胃もたれ、消化不良を改善します。なおウルソデオキシコールには胆汁を作る肝臓自体の働きを高める作用もあります。

消化酵素配合の商品を見る

種類 成分の例 特徴、効果など
胃酸分泌抑制成分(H2ブロッカー) ファモチジン H2受容体をブロックして胃酸分泌を抑える
第1類医薬品
胃酸分泌抑制成分(M1ブロッカー) ピレンゼピン M1受容体をブロックして胃酸分泌を抑える
制酸成分 合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム 胃酸を中和することで胃粘膜への刺激を緩和する
胃粘膜保護成分 スクラルファート、テプレノン 胃粘膜の炎症・潰瘍がある部分を保護する
胃腸鎮痛鎮痙成分 ブチルスコポラミン 胃腸や子宮などの平滑筋のけいれんを抑えたり胃酸分泌を抑える
健胃生薬・消化酵素 健胃生薬
 苦味性:オウバク、オウレン
 芳香性:ケイヒ、コウボク
消化酵素
 ビオジアスターゼ、リパーゼ
健胃生薬:唾液や胃液の分泌を促進する
消化酵素:炭水化物、タンパク質、脂質の分解を助ける

<胃腸薬の選び方>

胃腸薬薬選びのフローチャート

【選び方別】胃の不調の症状におすすめの市販薬

胃酸分泌抑制成分配合の胃腸薬

ガスター10<散>
税抜価格 6包・980円/12包・1,580円
第1類医薬品
第1類医薬品

胃痛・もたれなどの胃の不快な症状に。スーッとする散剤

1.本剤は胃酸中和型の胃腸薬とは異なるタイプの胃腸薬で、胃痛・もたれなどにすぐれた効果を発揮します。
2.胃の不快な症状の原因となる胃酸の出過ぎをコントロールし、胃粘膜の修復を促します。
3.携帯にも便利な分包タイプです。
◼︎対応レベル目安
胃痛
胸焼け
はきけ・むかつき
胃もたれ・胃部不快感
ガストール錠
税抜価格 30錠・950円/60錠・1,800円
第2類医薬品
第2類医薬品

ガストール錠は速効性制酸剤(炭酸水素ナトリウム)と持続性制酸剤 (メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)が出過ぎる胃酸を効果的に中和し、
M1ブロッカー(ピレンゼピン塩酸塩水和物)が出過ぎる胃酸分泌を元からおさえることで、 胸やけや胃痛をおさえるとともに、荒れた胃粘膜を保護します。
さらに消化酵素が働き食後の胃の負担を軽くしてくれます。
◼︎対応レベル目安
胃痛
胸焼け
はきけ・むかつき
胃もたれ・胃部不快感
消化不良・食欲不振

など

胃腸粘膜保護成分配合の胃腸薬

スクラート胃腸薬S(散剤)
税抜価格 1.3g×12包・950円/1.3g×34包・1,980円/14包・ー 円
第2類医薬品
第2類医薬品

弱った胃に直接効きます

有効成分スクラルファートが胃痛のもと(胃粘膜の炎症を起こした患部)に直接貼りつき、患部を保護・修復

7種の健胃生薬を配合し、弱った胃を回復させて元気な胃にしていきます

生薬配合でスーッと効きます
早く溶ける散剤タイプです
◼︎対応レベル目安
胃痛
胸焼け
はきけ・むかつき
胃もたれ・胃部不快感
消化不良・食欲不振
新セルベール整胃プレミアム〈錠〉
税抜価格 18錠・950円/36錠・1,800円/72錠・2,700円
第2類医薬品
第2類医薬品

新セルベール整胃プレミアム<錠>は、トリプルアクションで胃もたれなどの弱ってきた胃の症状を改善します。

・守る→胃の粘膜を覆うベールである「胃粘液」を増やして、胃を守ります。
・動かす→胃の運動を活発にします。
・消化する→脂肪を分解して、消化する力を高めます。

新セルベール整胃プレミアム<錠>は、1回1錠で効く飲みやすい錠剤です。
胃を守り元気な胃を取り戻す『整胃®』の働きで、胃を楽にしていきます。
◼︎対応レベル目安
胸焼け
はきけ・むかつき
胃もたれ・胃部不快感
消化不良・食欲不振

など

胃腸鎮痛鎮痙成分等配合の胃腸薬

ブスコパンA錠
税抜価格 20錠・1,200円
第2類医薬品
第2類医薬品

胃痛、腹痛、さしこみに
ブチルスコポラミン臭化物配合。
1回1錠で優れた効きめ。

●胃痛・腹痛・さしこみなどの痛みは、胃腸の過度の緊張やけいれんによっておこります。
●ブスコパンA錠は、胃腸の異常な緊張を和らげ、胃痛・腹痛・さしこみなどの痛みにすぐれた効果をあらわします。
◼︎対応レベル目安
胃痛
胸焼け
サクロンQ
税抜価格 6錠・680円/12錠・1,280円
第2類医薬品
第2類医薬品

末梢神経の伝わりをブロック。ムカムカ・はきけ・胃痛に速く効く

サクロンQは、胃酸やアルコールなどが胃粘膜を刺激して起きる「ムカムカ・はきけ・胃痛」に速く効く胃ぐすりです。
服用後、すみやかに溶解するクイック製剤のため、胃の中で早く溶けて、成分(オキセサゼイン)が胃粘膜に直接作用し、つらい症状を素早く改善します。
胃の痛みなど感じた時いつでも飲むことができます。
(1日3回までとし、服用間隔は4時間以上あける)
◼︎対応レベル目安
胃痛
胸焼け
はきけ・むかつき
胃もたれ・胃部不快感

など

消化酵素のみを配合した胃腸薬

ベリチーム酵素
税抜価格 1g×9包・920円/1g×27包・2,280円
第3類医薬品
第3類医薬品

年齢とともに消化力の低下を感じる方に
◼︎対応レベル目安
胃もたれ・胃部不快感
消化不良・食欲不振

など

常備薬としての胃腸薬は総合胃腸薬

症状がないうちに常備薬として胃腸薬を買っておこうという場合は、複数の成分を配合し、効能効果が幅広い総合胃腸薬を選ぶと良いでしょう。 ただし胃の不調の症状がはっきりしている場合は、より症状にあった成分が入った胃腸薬を選ぶことを心がけましょう。

代表的な総合胃腸薬

第一三共胃腸薬プラス細粒
税抜価格 1.3g×12包・900円/1.3g×30包・1,800円/1.3g×48包・2,400円
第2類医薬品
第2類医薬品

弱った胃に効き、腸の状態を正常に近づける

1.「胃」と「腸」をダブルケアするタイプの胃腸薬です。
2.6つの生薬成分が弱った「胃」に効き、植物性の乳酸菌「ラクボン」が「腸」の状態を正常に近づけます。
◼︎対応レベル目安
胃痛
胸焼け
はきけ・むかつき
胃もたれ・胃部不快感
消化不良・食欲不振
太田胃散
税抜価格 75g・680円/140g・1,200円/210g・1,680円
第2類医薬品
第2類医薬品

効果的に配合された7種の健胃生薬が弱った胃を元気にし、飲みすぎ、食べすぎ、胃のもたれなどの不快な症状を改善します。

作用時間の異なる4種の制酸剤が、胸やけ、胃痛、胃部不快感にすぐれた効果をあらわします。

芳香性健胃生薬の有効成分を逃がさないように独自の製法でつくられた散剤(粉末)です。生薬の芳香感とl-メントールの清涼感により、スッキリとした爽やかな服用感が得られます。
◼︎対応レベル目安
胃痛
胸焼け
はきけ・むかつき
胃もたれ・胃部不快感
消化不良・食欲不振
キャベジンコーワα
税抜価格 100錠・1,200円/200錠・1,900円/300錠・2,500円/18錠・600円
第2類医薬品
第2類医薬品

動きの鈍ってきた胃を元気に動かし、正常な胃の働きを取り戻してくれます。
胃の働きを良くしていく生薬ソヨウを配合した錠剤タイプの胃腸薬です。

特長 1
動きの鈍った胃を元気に動かし、胃の働きを正常に!

特長 2
外層と核錠の二層(ダブルレイヤー)構造
◼︎対応レベル目安
胃痛
胸焼け
はきけ・むかつき
胃もたれ・胃部不快感
消化不良・食欲不振
パンシロン01プラス
税抜価格 28包・1,200円/48包・1,700円
第2類医薬品
第2類医薬品

胃腸の調子が悪いときに

「パンシロン01プラス」は、食べすぎ・飲みすぎ・胸やけや、夜遅い食事で胃がもたれるなどの不快な症状に効く胃腸薬です。
胃をスーッとさせる速効性制酸剤と持続性制酸剤、荒れた胃粘膜を整える粘膜修復剤と健胃剤、さらに消化を促進する消化酵素など、胃腸薬の基本機能に必要な有効成分をバランスよく配合しました。
すっきりとのみやすい服用感です。
◼︎対応レベル目安
胃痛
胸焼け
はきけ・むかつき
胃もたれ・胃部不快感
消化不良・食欲不振

など

透析療法を受けている方は要注意

胃薬に含まれることがあるスクラルファートやメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどのアルミニウム化合物は、腎機能が低下した人に長期投与すると蓄積し、アルミニウム脳症などを発症するリスクが高まります。
その為、アルミニウム化合物を配合した胃薬は、透析療法を受けている方は服用することができません。

小児の場合

第一三共胃腸薬プラス細粒など3歳から服用可能な製品がありますが、まずは小児科を受診しましょう。また、妊娠中の女性に対しても、服用が検討できる商品もありますが、まずは主治医への相談が大切です。

こんな症状は受診を

以下に1つでも当てはまる場合は、医療機関を受診しましょう。

  • 突然、強い胃痛が生じた
  • 冷や汗をかくような強い胃痛がある
  • 胃痛以外に倦怠感、激しい吐き気などを伴う
  • 喉が詰まる感じを伴う
  • みぞおちの圧迫感がある
  • 痛みがみぞおちや背中に広がる感じがする
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