薬剤師が教える!痔の症状におすすめの市販薬
痔は、簡単に言えば肛門の病気の総称。いぼ痔、切れ痔、痔ろうの3つが代表的です。痛みで生活に支障が出るような場合は手術を行うこともありますが、そこまででなければ病院に行くのはハードルが高いという方も多いでしょう。
今回は、そんなときに使える痔の症状に合った市販薬の選び方、成分の解説、おすすめ市販薬を紹介します。
大手ドラッグストアでOTC(市販薬)を中心としたヘルスケア製品の接客販売や、メガベンチャー企業でオンライン診療事業の管理薬剤師を経験後、ウィルベース株式会社に入社。
現在は当サイト「CureBell」の運営・コラム作成、OTC・サプリメント等のリサーチ活動を務める。... 続きを読む
目次
痔の種類と出血の特徴
まずは痔の種類と、種類ごとの出血の特徴について見ていきましょう。
切れ痔
切れ痔とは、肛門の皮膚が裂けたり切れたりしている状態で、排便時に強い痛みを伴うことが多いです。血が出る場合は、トイレの時に紙に少し血がつくなど、少量の出血であるケースが多いです。
いぼ痔
いぼ痔とは、肛門に負担がかかって血行が悪くなり、うっ血することでいぼのようなものができた状態です。いぼ痔はさらに内痔核と外痔核に分けることができます。
肛門は粘膜と皮膚でできており、以下のように分類します。
- 内痔核:粘膜側(内側)にできたもの
- 外痔核:皮膚側(外側)にできたもの
内痔核は痛みがないのに急にたくさんの出血が起きることも。排便などで圧力がかかったり、傷がついたりすると一気に出血することがあります。
一方、外痔核は、痛み(特に排便時)はあっても出血することは少ないです。
いぼ痔による出血の特徴や例は以下の通りです。
- 便器が赤く染まるほどの多くの出血
- 血がぽたぽたたれる
- 便にすじ状の血がつく
など
痔の出血に対する市販薬の選び方
痔の薬は、出血、痛み、腫れ、かゆみに幅広く対応できる薬が多いです。自身の痔の症状にはどの剤形や成分が合っているかを確認しましょう。自身の症状に合わない薬を使うと症状の改善が遅れてしまう恐れがあります。
薬の剤形はどれがいい?
痔の薬には、坐剤、軟膏、注入軟膏、飲み薬などの剤形の種類があります。まずは、痔の症状や部位・使い勝手に合わせて、剤形で選びます。
坐剤
坐剤とは、肛門の中に挿入するタイプの薬です。肛門の内側の痔に適しています。慣れるまでは入れるのが難しいというかたもいらっしゃいます。
軟膏
手に取って塗るタイプの薬です。外側に痔があるときに適しています。
注入軟膏
チューブのような容器から薬を押し出して肛門の中に注入するタイプの薬です。肛門の内側の痔に直接アプローチしやすく、手を汚さずに薬を扱うことができます。
慣れていないと入れるのが難しいこともありますが、坐剤よりも抵抗なく入れられる方が多いでしょう。
また、指先にとって、肛門の外側の痔に塗って使うこともできます。
飲み薬(内服薬)
血流を整えて症状を改善したり、便秘や便の硬さを改善して痔にアプローチしたりする薬もあります。
剤形 | 適した痔の部位 |
---|---|
坐薬 | 肛門の内側の痔 |
軟膏 | 肛門の外側の痔 |
注入軟膏 | 肛門の内側の痔、肛門の外側の痔 |
効果・成分で選ぶ
なるべく高い効果を得たい:ステロイド配合
高い効果が得たいときは、ステロイド配合の薬を選びましょう。強力な抗炎症作用があるため、痔に対して高い効果が期待できます。
ステロイドは作用の強さによってストロンゲスト~ウィークの5段階に分かれており、作用が強いほど副作用のリスクも高いと言われています。
市販薬では3つの「ストロング(強い)」、「マイルド(おだやか)」、「ウィーク(弱い)」の製品が販売されています。
一方で、ステロイドにはリスクもあり、長期間使用を続けることで、まれにステロイド性皮膚炎や、肛門周囲白癬症といった皮膚炎になることがあります。
そのため、ステロイド配合の薬を10日間ほど使用しても症状が改善されない場合は肛門科もしくは外科を受診するようにしましょう。
また症状悪化のおそれがあるため、患部が化膿している場合には使用しないようにしましょう。
ステロイドを避けたい:グリチルレチン酸(ステロイド無配合)
ステロイドを避けたいときは、ステロイド無配合かつ、抗炎症作用のあるグリチルレチン酸配合のものを選びましょう。
かゆみもおさえたい:局所麻酔成分・抗ヒスタミン成分
かゆみも気になるときは、リドカイン等の局所麻酔成分や抗ヒスタミン薬配合の薬を選びましょう。多くの商品は複数の成分が配合されているので、ご自身の症状に合った商品を選びましょう。
期待できる効果 | 分類 | 成分の例 |
---|---|---|
止血する | 血管収縮成分 | テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、メチルエフェドリン |
炎症を抑える | ステロイド | ヒドロコルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル |
抗炎症成分 | グリチルレチン酸 | |
痛みやかゆみを抑える | 局所麻酔成分 | リドカイン、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン |
傷の修復をサポートする | 組織修復成分 | アラントイン |
使い心地で選ぶ
刺激がないほうがよいのか、すーっとしたほうがよいのかといった使い心地で選ぶのも一つの方法です。
刺激感のないものがよい:メントール系無配合
刺激がないほうがよい場合は、メントール系の成分を配合していない薬を選びましょう。
刺激がないほうがよい場合は、メントール系の成分を配合していない薬を選びましょう。
逆に、すっきりした使い心地がほしい場合は、メントール系の成分を配合している薬を選びましょう。かゆみがある場合にもおすすめです。
妊娠中・銃乳中の場合:医師や薬剤師に相談しよう
妊娠中は大きくなった子宮が腸を圧迫することが原因で、痔になりやすくなります。 また授乳中は母乳に水分が奪われることで、腸内の水分量が少なくなり、便秘がちになります。その結果、痔になりやすくなります。
妊娠中・授乳中は使用を避けたほうが良い成分があるため、医師や薬剤師に相談して安全に使用できるものを購入するようにしましょう。
痔の症状におすすめの市販薬
ここからは、痔の症状におすすめの市販薬をご紹介します。ステロイド配合
なるべく高い効果を得たい場合は、強い抗炎症作用が期待できるステロイド配合の薬を選びましょう。以下のような商品があります。
坐剤
軟膏
注入軟膏
ステロイド無配合でグリチルレチン酸配合
ステロイドの使用にはリスクもあるため、ステロイドの使用を避けたいときは、抗炎症作用が期待できるグリチルレチン酸配合の薬を選びましょう。以下のような商品があります。
メントール系配合
飲み薬
塗り薬や坐剤、注入軟膏に抵抗がある場合は、飲み薬の選択肢もあります。飲み薬には以下のような商品があります。
痔の症状に対するセルフケア・対処法
痔の予防、症状の緩和・改善のためには生活習慣を改善することが大事です。薬で一時的に症状が治まっても、 生活習慣が変わらなければ再発することもあるため注意しましょう。
長時間座ったままの姿勢でいない
肛門の血行不良やうっ血は痔の直接的な原因となります。そのため、デスクワークや長時間の運転には注意しましょう。時々姿勢を変えたり、ストレッチしたりして体を動かすことが大事です。
食事を見直す
アルコール、辛いものなどの刺激物は肛門の負担になることがあるため、摂りすぎは避けましょう。
また、便秘予防のために、野菜(食物繊維)を積極的に食べることも大事です。朝食をしっかり食べると、食後に便が出やすくなりますよ。
また、便秘予防のためには水分をしっかりとる必要がありますが、冷たい飲み物は冷えや下痢の原因となって逆効果なので、冷たい水分の飲みすぎは控えましょう。
ストレスや疲れをためない
ストレスや疲れは血行不良の原因となります。こまめなストレス発散を心がけましょう。睡眠や軽い運動は、ストレス解消につながるとともに、健康にもよいのでおすすめです。
冷やさない
血行が悪くなると痔につながるため、冷やさないようにしましょう。毎日湯船につかったり、冬場はカイロをあてたりして、肛門を温めることが大事です。
排便時にいきまない
無理にいきむと肛門に圧力がかかり、痔の発症・悪化の原因となります。もともといぼ痔がある場合、強くいきむことをきっかけに、多量に出血することもあります。
必要以上にいきむことがないように、食事などに気を使い、スムーズに排便できるようになるとよいですね。
排便後は優しくふく
排便後はに強くふくと肛門に負担がかかるので、紙を押し当てるように優しくふきましょう。温水洗浄機能を使うのもひとつの方法ですが、水圧が強くなりすぎないように注意してください。
こんなときは受診を!
肛門から出血する病気の中には重大なものもあり、消化管で出血していたり、大腸がんの恐れも。また、痔であっても日常生活に支障が出るような症状があるときは切除などの治療を受ける必要があります。
そのため、以下のような症状があるときは早めに受診を検討しましょう。
- 薬を使っても血が止まらない
- 痛みが強い
- 肛門の周辺に腫れと痛みがある
- 膿が出ている
- 肛門の周辺が熱い
- 便そのものに血が混じっている、便が黒い
- 発熱している
- 小児
など
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