薬剤師が教える!過労や夏バテなど、疲れやだるさに効く栄養ドリンク
仕事の追い込みや試験勉強などで疲れを一時的にしのぎたい、日ごろから疲れをためたくない、風邪などの発熱時に栄養補給をしたいなど、滋養強壮や栄養補給を目的に栄養ドリンクを利用している人は少なくないでしょう。また栄養ドリンクはドラッグストアやコンビニなどの店舗だけでなく、通販などでも多くの種類が販売されており、価格や効果の違いや選び方に困る方も多いことでしょう。今回は、疲れやだるさなどに効く栄養ドリンクの違いや選び方のポイントについて解説します。
栄養ドリンクとは
栄養ドリンクは医薬品、指定医薬部外品の大きく2つに分類されますが、選ぶ際には効能効果や成分表示などが目安になりますので、正しい知識や理解を身につけておきましょう。
目的に応じた選び方
目的に応じて、自分が何を必要としているのかをしっかり見極めて、正しく選ぶことが大切です。また医薬品や指定医薬部外品では用法用量も定められており、気を付けるべき点があります。
医薬品の栄養ドリンク
一般用医薬品(第2類、第3類)は予防や治療を目的にしており、効能効果が認められた有効成分を含みます。専門家である薬剤師や医薬品登録販売者が管理の下で販売されるドリンクとなり、主にドラッグストアなどで購入できます。
指定医薬部外品の栄養ドリンク
指定医薬部外品は効能効果が認められた有効成分を含みますが、医薬品に比べ、比較的に作用が穏やかなものです。薬剤師や医薬品登録販売者がいない店でも販売ができるため、コンビニやスーパーなどでも販売されています。
清涼飲料水
清涼飲料水は効能効果などの有効性は認められていません。また1日の服用量なども規定はありません。
美容系ドリンクや機能性ドリンク、エナジードリンクなどが清涼飲料水に含まれます。
分類 | 特徴 | 主な商品 |
---|---|---|
医薬品 | 効能効果の表示が認められており、予防・治療を目的とする | ユンケル皇帝 など |
指定医薬部外品 | 効能効果の表示は認められているが、作用は穏やか | リポビタンD、チョコラBBライト など |
清涼飲料水 | 効能効果などの有効性は認められていない |
美容系:ザ・コラーゲン など 機能性:キリン イミューズ など エナジードリンク:レッドブル など |
カフェインの過剰摂取には注意が必要
栄養ドリンクや若者を中心に売れているエナジードリンクにはカフェインが多く含まれているものがあります。カフェインは中枢神経刺激作用があり、眠気や倦怠感などを軽減し、一時的に集中力を向上させる作用が期待できるため、「あと数時間、もう一踏ん張りしたい」「会議に集中したい」などのシーンで役立つでしょう。
栄養ドリンクを時々飲むことは、そこまで問題ではありません。ただし、多用により急性中毒や依存症の危険があり、カフェインの過剰摂取による健康被害には注意が必要です。カフェインは『元気の前借り』ですので、栄養ドリンクに頼るだけでなく、しっかりとした休息を心がけましょう。
<食品中のカフェイン濃度>
食品名 | カフェイン濃度 | 備考 |
---|---|---|
エナジードリンク
又は 眠気覚まし用飲料(清涼飲料水) |
32~300mg/100mL (製品1本当たりでは、36~150mg) |
製品によって、カフェイン濃度 及び内容量が異なる。 |
コーヒー(浸出液) | 60mg/100mL | 浸出法:コーヒー粉末10g、熱湯150mL |
インスタントコーヒー(顆粒製品) | 4.0g/100 g ⇒2g使用した場合、1杯当たり80mg |
|
参照元:農林水産省
<カフェインの1日当たり摂取量の目安>
- 健康な成人:最大400mg/日(コーヒーをマグカップで約3杯分)
症状に応じた選び方
「どの栄養ドリンクが一番効くの?」という質問を来局者からいただくことがあります。商品ごとの明確な比較データなどはなく、効き目には個人差もあることから、自分にあった商品を選ぶことが重要になるとお答えしています。
目安として、疲れやだるさなどの症状がつらい場合は、医薬品の栄養ドリンクを選ぶと良いでしょう。ただし販売価格は、指定医薬部外品より医薬品のドリンクの方が高い傾向にあります。目を覚ましてシャキッとしたい場合などは、エナジードリンクも候補となるでしょう。
ドリンクと錠剤(ビタミン剤など)の違い
主に選択のポイントとなるのは、服用回数や期間などでしょう。今日を乗り越えたいといった場合など1日だけ使用する際には、栄養ドリンクを選ぶと良いでしょう。特に眠気や倦怠感の改善などに効果があるカフェインが含まれた栄養ドリンクは効果を実感しやすいでしょう。
一方で、継続して服用を続けたい場合は、ビタミン剤などの錠剤がおすすめです。栄養ドリンクと比較して、1回服用あたりのコストが低くなる場合が多く、また糖分やカロリーの摂取も少なくなります。
栄養ドリンクを飲むタイミングは?
基本的には服用のタイミングは決められていないものがほとんどですが、吸収の良い食後のタイミングに飲むことをおすすめします。
また朝からだるさを感じる、明日に疲れを残したくないなど目的別に服用のタイミングを変えることもおすすめです。寝る前に飲む場合は、眠りを妨げないノンカフェインのドリンクを選びましょう。
栄養ドリンクを服用する際の注意も知っておこう
手軽に服用できる栄養ドリンクですが、指定医薬部外品、医薬品ともに服用に関しての注意も必要です。
漫然と長期で服用したり、大量に服用したりしない
だるさや疲れを感じた際に、栄養ドリンクをリピートで購入・服用される方もいますが、服用して効果が実感できたか確認することが望ましいでしょう。
効果がないのに服用を続けることは、身体的にも経済的にも負担になります。効き目には個人差があるため、用法用量や注意事項を守って、漫然と長期で服用したり、大量に服用したりすることがないようにしましょう。
カロリー表示にも気配りを
栄養ドリンクのカロリーを気にされる方は少なくないと思います。カロリー表示については様々な表示がされており、カロリーを気にされる方は以下のような商品を選ばれると良いでしょう。
カロリー | 表示 |
---|---|
5kcal~20kcal (100mLあたり) |
・低カロリー ・カロリー控えめ ・カロリーライト |
5kcal未満 (100mLあたり) |
・カロリーゼロ ・ノンカロリー |
【成分別】おすすめの栄養ドリンクの選び方
栄養ドリンクには、ビタミンB群やタウリンなどを配合したリポビタンDのような指定医薬部外品や滋養強壮に効果がある生薬成分やビタミンB群などを配合したユンケル黄帝のような医薬品まで幅広いラインナップがあります。
主に栄養ドリンクに配合される成分は、ビタミン、生薬、タウリンやその他の成分の大きく3つに分類されます。
ビタミン
ビタミンB1、B2、B6、ビタミンCなどが主なビタミンとして配合されており、ビタミンB群はエネルギーを生み出すエネルギー代謝に重要な栄養素として配合されます。
成分 | 主な作用 |
---|---|
ビタミンB1 |
・主に糖質をエネルギーに変えるサポート ・疲労回復、神経痛、眼精疲労などに働く |
ビタミンB2 |
・糖質、脂質、たんぱく質をエネルギーに変えるサポート ・口内炎、皮膚炎などに働く |
ビタミンB6 |
・主にたんぱく質をエネルギーに変えるサポート ・口内炎、肌荒れなどに働く |
ビタミンC |
・皮膚、粘膜の機能の正常化 ・しみ、そばかす、肌荒れなどに働く |
タウリンやその他の成分
タウリンは主成分としても配合され、代謝に関わり、胆汁の分泌や解毒、肝保護などの作用があり、疲労回復や栄養補給に効果があります。
またその他にグルクロノラクトン、アスパラギン酸ナトリウム、カルニチン、肝臓水解物などが配合されます。
主な成分 | 主な作用 |
---|---|
タウリン |
・疲労回復 ・肝機能の向上 |
グルクロノラクトン |
・疲労回復 ・肝臓の働きをサポート |
アスパラギン酸ナトリウム |
・エネルギー産生効率の向上 |
肝臓水解物 |
・滋養強壮 ・肝機能の向上 ・胃腸の働きをサポート |
疲労回復におすすめ
ビタミンやタウリンなどは主に疲れやだるさ、寝不足といった疲労回復時におすすめする成分です。一般的に医薬品、指定医薬部外品などの栄養ドリンクの主成分として使われます。
リポビタンDやチオビタ・ドリンク、アリナミンVなどはビタミンやタウリンが主成分となります。
肌荒れや女性特有の悩みにおすすめ
チョコラBBローヤル2などのビタミンB2、B6がメインで配合される栄養ドリンクは肌の不調を感じた時におすすめです。
また生理周期に伴っただるさなど女性特有のお悩みには、鉄分を配合した栄養ドリンクなどもあります。
飲酒時や二日酔いにおすすめ
ヘパリーゼドリンクIIなどの肝臓水解物がメインで配合される栄養ドリンクは飲酒の前や後などにおすすめです。お酒の分解を行う肝臓の働きをサポートしてくれるだけでなく、胃腸機能のサポートも期待できます。
またそのほかにもタウリンやグルクロノラクトンなども肝臓の働きをサポートしてくれるため、良いでしょう。
栄養ドリンクを飲んだ後に尿が黄色くなるのは大丈夫?
栄養ドリンクに含まれるビタミンB2が排泄される際に、尿が黄色くなることがあります。これはビタミンB2の色が黄色であるためですので、使用を中止したり、心配したりしなくても大丈夫です。
生薬
より効果を求めたいといった方には、ビタミンやタウリンだけでなく、動物性生薬のゴオウやハンピ、植物性生薬のニンジン、ショウキョウなどを配合した栄養ドリンクも候補となります。
成分 | 主な作用 |
---|---|
ゴオウ(牛黄) |
・滋養強壮 |
ハンピ(反鼻) |
・滋養強壮 |
ニンジン(人参) |
・滋養強壮 ・血行促進 ・胃腸の働きをサポート |
ショウキョウ(生姜) |
・血行促進 ・胃腸の働きをサポート |
ローヤルゼリー |
・滋養強壮 ・血行促進 ・新陳代謝の促進 |
風邪を引いた時の栄養補給などに
風邪を引くと多くのエネルギーを消費します。体内のエネルギーを作るために、ビタミンB群やビタミンCが多く含まれている栄養ドリンクがおすすめです。
さらにニンジン、ショウキョウなどの生薬が配合されていると発熱を伴う体力消耗時の栄養補給に効果的です。
また風邪を引いた時は、寝て休むことが特に大事です。栄養ドリンクにはカフェインを含むものが多いため、ノンカフェインの商品を選ぶと良いでしょう。
<疲れやだるさなどに効く栄養ドリンクの選び方>
【選び方別】疲れやだるさなどに効くおすすめの栄養ドリンク
指定医薬部外品のドリンク
カロリーを気にされている方
医薬品のドリンク
ノンカフェインのドリンク
指定医薬部外品
医薬品
風邪の際の栄養補給に
肌荒れなどに
生理周期に伴っただるさなど
飲酒前後などに
お子様が服用できる
疲労をためないためのセルフケアも重要!
栄養ドリンクに頼ることも1つの手段ですが、日々の疲労をためないために気を付けることも重要です。
規則正しい生活を
疲労をためないために、睡眠をしっかりとることや1日3回の食事をビタミンやアミノ酸など栄養バランスをよく摂ることがまず重要です。その上で、滋養強壮などを目的に栄養ドリンクを活用していくとよいでしょう
睡眠
睡眠は身体と脳の両方を休める効果があります。その為、十分な睡眠時間や質の良い睡眠をとることが疲労をためないうえで、重要です。目安ですが、7時間程度の睡眠時間を確保していただくとよいでしょう。
入浴
入浴をすることで、疲労をためないように心がけることも重要です。湯船に浸り、身体を温めることで、血行促進、血液循環の期待ができ、疲労が残りにくくなります。またリラックス効果で疲労回復にも期待ができます。
一方で、温度が熱すぎたり、長時間湯船に浸ったりすると、疲労を感じてしまうこともあります。ぬるめのお湯(40℃以下)に10分程度浸るのがよいでしょう。
運動
疲労を感じやすい時などは適度な運動を行うことも重要です。適度に身体を動かすことは血液循環をよくし、筋肉にたまった乳酸を排出する効果もあります。
激しい運動は疲労がたまってしまうため、ジョギングを20~30分くらい行い、軽く汗ばむ程度がよいでしょう。
こんな症状は受診を
疲れやだるさの原因が、がんや更年期障害、貧血など病気の可能性もあるため、以下に1つでも当てはまる場合は、医療機関を受診しましょう。
- 十分に休んでも疲れが回復しない
- 疲れやだるさが長く続いており、顔色が悪い
- 疲れやだるさ以外に頭痛、めまい、吐き気など他の症状がある
- 肩凝りが経験したことがないほどひどい、痛みが強い
- 不眠や意欲の低下がある