薬剤師が教える!せき止めのおすすめ市販薬
せきの症状があると不快感や生活にやや支障はあるものの、病院に行くほどではない…ということも多いですよね。そんなときに頼りになるのが市販薬です。
この記事では、市販のおすすめのせき止め薬(鎮咳去痰薬)について、薬の種類や選び方、注意点などを詳しく解説します。
大手ドラッグストアでOTC(市販薬)を中心としたヘルスケア製品の接客販売や、メガベンチャー企業でオンライン診療事業の管理薬剤師を経験後、ウィルベース株式会社に入社。
現在は当サイト「CureBell」の運営・コラム作成、OTC・サプリメント等のリサーチ活動を務める。... 続きを読む
市販のせき止め薬を使うメリット
せきの症状だけなら大したことはない…と軽く考えてしまうこともあるかもしれませんが、せきによってのどを傷めたり、睡眠の妨げになったり、体に負担がかかったりすることがあり、意外と侮れません。
そのため、症状緩和のために市販のせき止め薬を使うことには大きなメリットがあります。
知っておきたいデメリット・リスク
ただし、せきは体に有害な異物を排除するための反応なので、やみくもに薬を使うと異物が排出されず、逆効果になることもあります。高齢の方はむやみにせきを止めると痰が排出されなくなり、誤嚥性(ごえんせい)肺炎のリスクが高まるとされています。
さらに、薬の成分によっては症状が悪化することもあります。たとえば、麻薬性鎮咳薬(ちんがいやく)は喘息(ぜんそく)悪化につながることがあります。
このように、市販薬を使わないほうがよいケースや病院の受診が必要なケースもあるので、市販薬を使う前にしっかり確認しておきましょう。
市販のせき止め薬の主な成分
市販のせき止め薬の主な成分や特徴は以下の通りです。
種類 | 主な成分 | 効果・特徴 |
---|---|---|
麻薬性鎮咳(ちんがい)成分 | コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩 | ・せきに関与する中枢に直接働きかけ、せきを鎮める ・鎮咳効果が高い |
非麻薬性鎮咳(ちんがい)成分 | デキストロメトルファン、チペピジン、ノスカピン | ・せきに関与する中枢に働きかけ、せきを鎮める ・鎮咳効果は穏やか ※デキストロメトルファンはしっかりとした効果が期待できる |
去痰薬(きょたんやく) | カルボシステイン、ブロムヘキシン | たんの粘りを軽減し、痰が排出されやすくする |
アンブロキソール | 気道の粘膜を整えることで、たんが排出されやすくする | |
グアイフェネシン | 気道分泌を促して、たんが排出されやすくする | |
気管支拡張成分 | メチルエフェドリン | 気管支を拡げて呼吸を楽にし、咳せきを鎮める |
せきが出るときの市販薬の選び方
市販のせき止め薬には成分が複数配合されており、「せきを止める薬」「たんを改善する薬」のように厳密に分かれていないケースが多いです。
薬の成分には副作用のリスクもあるため、成分の種類が多ければ多いほど不要な成分を摂取したり、副作用のリスクが高まったりするといえます。
そのため、可能な限り、自分にとって必要な成分だけが配合された薬を選ぶことをおすすめします。
まずは症状や原因で適した有効成分が入った薬を選び、眠気の有無等によって服用できないものを避けるように選ぶとよいでしょう。
症状によって適した成分で選ぶ
せきの状態や原因、その他の症状によって、適した薬(成分)は異なります。詳しく見ていきましょう。
乾いた(乾性)せき:デキストロメトルファンなど非麻薬性鎮咳成分
コンコンという乾いたせきは、せきの中枢が刺激されることで起きるとされています。
せき中枢に働きかけ、せきを鎮める鎮咳成分には麻薬性、非麻薬性がありますが、せきが軽度であれば、比較的安全性が高いとされるデキストロメトルファンなどの非麻薬性鎮咳成分を配合した薬を選びましょう。
非麻薬性鎮咳成分の入ったせき止め薬は便秘や眠気の副作用が気になる方や、12歳未満の方でも服用できるものが多いですが、成分によっては眠気がある場合がありますので、注意が必要です。
せきがひどい場合:麻薬性鎮咳成分
せきがひどくて眠れない等の場合は、麻薬性鎮咳成分の入ったせき止め薬が選択肢の1つとなります。
しかし、便秘や眠気の副作用があったり、気管支喘息をお持ちの方や12歳未満は使えなかったりするため、気になる方は非麻薬性を選びましょう。
たんが絡む湿った(湿性)せきの場合:去痰成分配合
ゴホゴホとした湿ったせきの場合、気道にたんが絡んでいる可能性があります。そのような場合は、去痰成分が配合されているものを選びましょう。
なかでもカルボシステイン、ブロムヘキシンは医療用でも使われている成分であり、しっかりとした効果が期待できます。
なお、せきよりもたんが主症状である場合は、鎮咳成分が入っていない去痰成分のみの薬を選ぶのがよいでしょう。
激しい咳が繰り返し出る:気管支拡張成分
激しい咳が繰り返し出る、息苦しい、呼吸をする度にゼーゼー、ヒューヒューと音がする場合、気管支拡張成分が含まれた市販薬で症状をおさえることができます。
しかし、市販薬は一時的な服用にとどめ、なるべく早く医療機関(内科)を受診しましょう。
眠気の有無等に応じて選ぶ
薬の種類によっては、眠気が生じたり、妊娠中や授乳中は使えなかったりするものもあるため注意しましょう。
デキストロメトルファンなどの非麻薬性鎮咳成分を含むせき止め薬のほとんどは車の運転不可の注意事項があります。チペピジン、ノスカピンにはそのような注意事項はありませんが、これらのみが入っているせき止め薬はありません。
車の運転をする場合:漢方薬
車の運転をする方は、眠気が生じる薬は避けましょう。眠気の心配がない麦門冬湯などの漢方薬が選択肢となります。
かぜ薬との併用はしないように
一般的に販売されている多くのかぜ薬には、鎮咳成分や去痰成分などのせき止め薬に配合される成分が含まれています。
かぜ薬とせき止め薬を併用してしまうと通常よりも多くの成分を摂ってしまうことになりますので注意してください。
せき、たん以外に発熱や鼻水、喉の痛みなどのかぜ症状がある場合は、総合かぜ薬の服用を検討しましょう。以下のコラムでおすすめのかぜ薬をご紹介しているので、ぜひご覧ください。
薬の形状で選ぶ
市販のせき止め薬には、錠剤、顆粒、カプセル、トローチ、シロップ等などさまざまな形状(剤形)があります。1つのブランドでいくつかのタイプが販売されているものもあるので、飲みやすさや好みによって選びましょう。
<せきが出るときに対応した薬の選び方>
せきにおすすめの市販薬
ここからは、せきにおすすめの市販薬を、症状や成分ごとにご紹介します。
デキストロメトルファン配合
かぜによるせきに使用することができ、便秘の副作用の心配も少ないうえに、しっかりとした効果が期待できます。デキストロメトルファン配合の薬には、以下のようなものがあります。
妊娠中、授乳中などの場合は、医師や薬剤師、登録販売者などに相談してから購入してください。
せきがひどい場合に
せきがひどい場合には、コデインリン酸塩やジヒドロコデインリン酸塩を配合した麻薬性鎮咳成分が入ったせきどめ薬も選択肢の1つです。
咳によって呼吸も苦しくなる場合に
咳によって呼吸も苦しくなる場合には気管支を広げる成分もプラスされたものを選びましょう。
ただし長期連用は避け、5-6回使用しても症状が改善されない場合は、医療機関(内科)を受診しましょう
たんが絡む湿ったせきの場合に
ゴホゴホとした湿ったせきや、たんが絡むときには、去痰成分が配合されている薬を選びましょう。
医療用でも使われており、しっかりとした効果が期待できるカルボシステインやブロムヘキシンを配合している薬には、以下のようなものがあります。
せきが少なくたんが主症状の場合に
鎮咳成分が入っていない去痰成分のみの薬には、以下のようなものがあります。
せきに効く漢方薬
せきに効果が期待できる漢方薬には、以下のようなものがあります。
市販のせき止め薬に関する注意点
市販のせき止め薬を使うにあたって、いくつか知っておきたい注意点があります。詳しく見ていきましょう。
市販薬を長期間使わない
市販のせき止め薬は、あくまで一時的な症状緩和のために使うものです。長期間の服用にはさまざまなリスクがあるため、数回飲んでも症状が改善されない場合は医療機関(内科)を受診しましょう。
飲み合わせに注意する
市販のせき止め薬にはさまざまな成分が入っていることが多いので、他の市販薬や病院で処方されている医薬品との相性が良くない可能性があります。
それぞれの薬の効果が弱くなったり、逆に過剰になって体に悪影響を与えたりすることも考えられるので、薬を併用したい場合は医師や薬剤師に確認しましょう。
鎮咳成分のリスクを理解する
麻薬性鎮咳成分は特に注意が必要
麻薬性鎮咳成分は眠気を感じる、副作用として便秘や、12歳未満における呼吸抑制などのリスクがある、依存性や耐性がつくことがあるなど、デメリットもあります。12歳未満の使用も不可なので注意しましょう。
デキストロメトルファンについて
非麻薬性鎮咳成分に分類される成分はいくつかありますが、なかでもデキストロメトルファンには少し注意が必要です。
デキストロメトルファンの作用は麻薬性鎮咳成分と同等と言われることがあり、それでいて子どもも服薬することができます。
一方で、乱用のリスクがあったり、眠気が生じることがあるため車や機械等の運転などはできないことを理解しておきましょう。
こんなときは病院の受診を
せきの原因として、肺炎、百日咳、結核、心不全、肺がんなどの重大な呼吸器・循環器の病気の可能性も考えられます。注意すべき症状と可能性のある病気は以下の通りです。
- 寒気がしてふるえがある:肺炎
- 高熱、寝汗、筋肉痛など:肺炎、インフルエンザなどのウイルスによる感染症
- せきで胸が痛い:肺炎、結核など
- 痰に血が混じる:肺炎、結核など
- 体重が著しく減っている:肺炎、結核など
- せきが長引き、徐々に悪化している:肺炎、結核、百日咳、喘息など
- 喘鳴がある(ゼーゼー、ヒューヒューする):喘息
- 呼吸困難:喘息
- 最近海外に行った:結核
- 高血圧や心不全で薬を飲んでいる:薬の副作用
上記のような症状を伴う場合や、せき止め薬を5-6回程度使用しても症状が改善されない場合、発熱が続いている場合、持病がある場合などは受診を検討してください。
そこまで重大な症状がない場合は、市販薬が大きな頼りになるでしょう。