医療/ヘルスケア・製薬関連の研究事例 調査レポート

医療・ヘルスケアおよび製薬業界においては、AIやビッグデータ、個別化医療(プレシジョン・メディシン)といった先進技術の活用により、研究開発のアプローチが大きく進化しています。特に大学・研究機関・企業が連携して推進する共同研究の成果は、疾患の早期発見、創薬プロセスの短縮、治療効果の最大化などに顕著な影響を与えつつあります。
本記事では、医療・製薬分野で注目されている研究事例をご紹介します。医療・製薬分野の研究について効率的に理解できる内容となっておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
研究事例まとめ
日本医科大学:AI×ビッグデータにより疾病予測精度の大幅な改善

引用元:https://www.nms.ac.jp/college.html
日本医科大学は、電子カルテとAIを融合し、医療ビッグデータを多角的に解析するマルチモーダルAIを構築しました。
従来のAIでは、単一の検査データを対象とするものが多かったのに対し、今回のAIは、複数の検査データを同時に解析することができます。実証実験では、前立腺がんの電子カルテデータや病理画像をAIに解析させたところ、手術から5年後までの再発予測の精度が、既存手法と比べて10%向上しました。
これにより、治療計画の最適化、疾患の早期発見などが可能となり、医療サービスの質向上、医療従事者の業務負担減少などの効果が期待されています。
順天堂大学:生成AIで診療報酬算定作業を数分に短縮するシステム開発を開始

順天堂大学は、生成AIを活用し、診療報酬の算定を効率化するシステムを開発することを発表しました。
株式会社FIXERの大規模言語モデル(LLM)を使った生成AIサービス「GaiXer(ガイザー)」を活用し、順天堂大学が提供する電子カルテの情報をもとに診療報酬算定の労力を減らす仕組みを構築します。
従来は病院全体で数日かかっていた診療報酬の算定作業を数分程度に短縮できる見込みで、医療現場の負担や医療費を削減するとともに、来院者の待ち時間を短縮することができると期待されています。
製薬研究事例
アステラス製薬株式会社、同志社大学、和歌山県立医科大学:ビッグデータに基づく医薬品を共同研究

引用元:https://www.wakayama-med.ac.jp/intro/press/2021/03-01.html
和歌山県立医科大学、同志社大学およびアステラス製薬は共同で、ビッグデータに基づく医薬品開発の革新を目指す研究プロジェクトを立ち上げました。
本研究では、従来のエビデンス・ベースド・メディシン(EBM)の限界を踏まえ、統計解析やAI技術を活用し、より高度な意思決定支援モデルの構築を目指します。
具体的には、同志社大学が開発意思決定の最適化、和歌山県立医科大学が治療効果の最大化に関する研究を担い、アステラス製薬が実務面での応用と連携を進めています。
各機関の専門性を活かしたアプローチにより、個別化医療や効率的な新薬開発を支える基盤技術の確立を図り、将来的には医療の質向上と医療経済の最適化にも寄与することが期待されています。
本取り組みは、大学と企業の連携による新たな医療価値創出モデルとして注目されています。
株式会社Preferred Networks、京都薬科大学:深層学習と大規模計算資源を活用したAI創薬技術を共同研究

引用元:https://www.preferred.jp/ja/news/pr20210906/
株式会社Preferred Networks(PFN)は、深層学習と大規模計算資源を活用したAI創薬技術を開発し、医薬品開発の初期工程を高速化する取り組みを進めています。
本技術により、候補物質の探索から分子設計、モデリング、最適化までをコンピュータ上で実行し、従来10年以上かかる創薬プロセスの大幅な効率化と成功率の向上を目指しています。
京都薬科大学との共同研究では、新型コロナウイルスのメインプロテアーゼを阻害する非ペプチド様構造の新規化合物を発見し、その活性を確認しました。
PFNは今後もAI創薬技術の改良とパートナー連携を通じ、革新的な医薬品の実用化を加速させる方針です。AIと計算科学を融合した先進的な創薬支援が、医療分野での大きな可能性を示しています。