管理栄養士が解説!オーガニックと無農薬って何が違うの?定義や認証制度について

更新日: 2025年08月19日
スーパーやドラックストアなど、色々な場所で見かける「オーガニック」という表示。「なんとなく体に良さそう」、「優しそう」というイメージがあるかもしれませんが、実は「オーガニック」と表示するには、決まりがあることをご存じですか? このコラムでは、オーガニックの定義や適用される範囲、認証制度、無農薬などの混同しやすい言葉との違いについて解説します。
この記事の監修者
宮﨑奈津季
管理栄養士、薬膳コーディネーター、離乳食アドバイザー 大学卒業後、介護食品メーカーで営業を2年間従事。その後、管理栄養士に。料理動画撮影やレシピ開発、商品開発、ダイエットアプリの監修、栄養価計算などの経験あり。 現在は、記事執筆・監修、特定保健指導をメインに活動中。

「オーガニック」って何?

オーガニックとは、そもそもどのようなものを指しているのでしょうか?ここでは、オーガニックの定義と適用される範囲について解説します。

オーガニックの定義

  日本で「オーガニック」という言葉は、「有機」と同じ意味で使われます。 これは、農薬や化学肥料に頼らず、自然の力を活かして生産された食品や農産物、加工方法のことです。 日本で「オーガニック」や「有機」と表示するためには、有機JAS規格と呼ばれる国の基準をクリアして登録認証機関から認証を受ける必要があります。 この認証を得てはじめて、有機JASマークをつけることができ、農産物や加工食品などに「オーガニック」などの名称の表示をつけて販売できるのです。

適用される範囲

日本の有機JAS制度が適用される範囲は以下のカテゴリーです。  
  • 有機農産物:野菜、果物、米、きのこ類など
  • 有機加工食品:みそ、しょうゆ、コーヒー、お茶、豆腐など
  • 有機畜産物:肉、卵、牛乳など
  • 有機飼料:有機畜産物に与えるための飼料
  • 有機藻類:海藻類など
一方で、化粧品や日用品でも「オーガニック」と呼ばれる表示を見かけることがありますが、これらは今の日本の法律では対象外です。そのため、上記で挙げたカテゴリー以外については国が定めた統一基準が存在していないということは理解しておきましょう。

オーガニックの特徴

オーガニックには、どのような特徴があるのでしょうか?法的な定義から読み解くと、大きく3つの特徴があります。

化学合成農薬や化学肥料不使用

オーガニック(有機農業)の最大の特徴は、化学的に合成された農薬や肥料に頼らないことです。その代わりに、土壌そのものの力を引き出すことを目指します。 例えば肥料。落ち葉や米ぬか、家畜のフンなどを原料とした「堆肥(たいひ)」の使用が基本です。それだけで難しい場合は、有機JAS規格で使用が許可されている天然由来の資材を使います。 病害虫への対策は、益虫(えきちゅう、害虫を食べたり受粉を媒介してくれる役立つ虫)を利用したり、防虫ネットを貼ったり、そもそも品種を選ぶ時に病気に強いものを選ぶといったことを行います。

遺伝子組換え技術不使用

遺伝子組換え(GM)技術を使わないことも大きな特徴です。 有機JAS規格では、生産のいかなる段階においても遺伝子組換え技術の利用を固く禁じており、種子や苗、飼料など全ての資材に適用されています。 海外のオーガニック基準でも遺伝子組換え技術は禁止されており、遺伝子組換え技術の長期的な影響を懸念する消費者にとって、安心できる選択肢の一つになっています。

環境への負担減

有機農業の定義には、「環境への負担をできる限り低減する」という一文が含まれており、環境保全が目的の一つとなっています。 化学肥料や農薬を使用しないことで、生物多様性の保全や土壌汚染・水質汚染を防ぐことにつながります。

よく混同される言葉

オーガニックとよく間違って使われたり、同じイメージだと混同されてしまったりする言葉について、どのような違いがあるのかを解説します。

「無農薬」との違い

  オーガニックと聞くと無農薬だと思われがちですが、これは正解ではありません。 前述したとおり、オーガニックという表示は、有機JAS規格に用いられており、化学合成農薬は不使用です。ただし、自然な方法でも防ぎきれない重大な病害虫が発生した場合、有機JAS規格で許可された天然由来の農薬であれば、使用が認められています。つまり、オーガニックであっても、一切の農薬が使われていないわけではないということです。 また、現在農林水産省のガイドラインにより、「無農薬」「減農薬」という表示は、禁止されています。なぜなら、消費者に「農薬が一切使われていない」「残留農薬がゼロである」といった誤解を与える可能性があるからです。

ナチュラルとの違い

「ナチュラル」や「自然派」という表記もよく使われますが、オーガニックと大きく違う点があります。「オーガニック」は法律と認証制度があるのに対し、「ナチュラル」や「自然派」は国が定めた法的な基準がありません。 一般的には「自然由来の原料を使っている」「化学的なものを避けている」といったイメージで使われていますが、解釈は企業やブランドによって様々です。法的な基準の有無が、オーガニックとナチュラルの大きな違いです。

オーガニックの認証制度について

オーガニックという表記を使うには、定められている認証機関のお墨付きをもらう必要があり、その基準は国によって様々です。ここでは、日本と主な海外の認証制度について解説します。

日本の有機JASマーク

日本の有機JASマークは、太陽と雲、植物をイメージした緑色のロゴで、有機食品であることを示す公的なマークです。農作物や加工食品に「有機」や「オーガニック」と表示するには、このマークの貼り付けが義務付けられているので、選ぶ時はこのロゴをチェックすると良いでしょう。認証を受けるには、下記のようなプロセスが必要です。  
  1. 農林水産省に登録された第三者の登録認証機関に申請をする
  2. 検査員が生産現場を訪問し、JAS規格をもとに厳しくチェックする
  3. 基準をクリアすると認証事業者になり、有機JASマークが使用できる
一度認証を取得した後でも、それを維持するために最低でも1年に1回の調査を受けることが必要になります。

海外の主要認証制度

日本以外にも、国や地域ごとにオーガニック認証制度が存在しています。

アメリカのUSDAオーガニック

アメリカ農務省が管轄する認証制度です。 オーガニック原料の含有率に応じて、「100% Organic」「Organic(95%以上)」「Made with Organic(70%以上)」とカテゴリーに分けられています。ただし、「Made with Organic」のみUSDAマークは使用できません。農産物や畜産物はもちろん、化粧品などにも適用されています。

EUオーガニック認証

欧州委員会が制定している制度で、星が葉の形に並んだ「ユーロリーフ」というロゴが目印です。このロゴがついているものは、原料の95%以上がオーガニックであることが条件となっています。

オーガニック製品を取り入れるメリット・デメリット

ここまで、オーガニックの定義や認証制度などについて解説しました。実際の生活にオーガニック製品を取り入れるのにはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか?

メリット

出展:国連広報センター

オーガニック製品を選ぶことは、環境保全への貢献につながることが一番大きなポイントです。土壌や水質資源を守り、生物多様性を豊かにすることで、結果として持続可能な農業にもつながります。 今、世界で取り組まれているSDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連サミットで全ての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられたものです。 17の目標が掲げられており、オーガニック製品を取り入れると下記の6項目に取り組むことができます。  

2.飢餓をゼロに

3.すべての人に健康と福祉を

6.安全な水とトイレを世界に

12.つくる責任つかう責任

13.気候変動に具体的な対策を

15.陸の豊かさを守ろう

デメリット

オーガニック食品は、そうではない食品に比べて金額が高く、入手しにくいことが多いです。オーガニック農業は栽培方法に手間がかかったり、認証取得や維持のコストがかかったり、流通量が少なかったりします。また、保存料などの合成添加物を使っていないため、製品によっては日持ちが短いこともあります。

オーガニックのサプリ

オーガニックの考え方は、サプリメントの世界にも広がっています。ここでは、認証を受けた製品や、オーガニックの原材料を使った製品をご紹介します。

有機酵素錠剤

メーカー名:株式会社ZIRA JAPAN 特徴:添加物を一切加えず、32種類の有機農作物を発酵させたエキスと国産の有機明日葉粉末を錠剤化したサプリメントです。日本で初めて有機JAS認証を取得した酵素サプリとして知られています。

雲南 田七人参

メーカー名:フジワラ化学株式会社 特徴:有機栽培された田七人参100%を使用した健康補助食品です。田七人参とは、中国の一部の地域で栽培されている植物で、サポニン配糖体や田七ケトンと呼ばれる特有の成分が含まれています。

ボタニカル ビタミンC+グリーンアルジー

メーカー名:株式会社AMRITARA 特徴:ブラジル産の有機アセロラを使用したサプリメントです。葉酸や酵母なども加えられており、ビタミンC、葉酸の栄養機能食品となっています。美容を意識したい方や、食生活の偏りが気になる方におすすめです。

まとめ

オーガニックの定義や、無農薬などとの違い、認証制度の概要について解説しました。 一言でオーガニックといっても、法律で定義されており、有機JASマークなどの認証が必要であることをぜひ知っていただけたら幸いです。 最終的にどのような製品を選ぶかは、個人の価値観や環境への意識、予算などで判断しましょう。このコラムをベースにし、ご自身で納得できる選択ができるとよいですね。

<参考文献>